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東日本大震災情報
今泉女子専門学校[福島県郡山市]
今泉玲子校長に聞く

大震災の復興は東北人の粘りで
90年の伝統しっかり受け継ぐ



 ■全員無事に避難

 地震が発生した3月11日午後2時46分ごろ、学校は授業中でした。3月8日に卒業式を終え、震災前日の10日には在校生と卒業生によるファッションショーを開きました。来場者から拍手喝さいをいただき、その余韻に浸っている最中にあの巨大地震に襲われたのです。当日は5階にも学生・生徒がいたのですが、非常に落ち着いて冷静に近くの駐車場に避難しました。日ごろの避難訓練や専門教育を通した人間力が役に立ったと思います。

 「いざ」という時に、秩序ある行動や判断力が求められるわけですが、一人のケガ人もなく避難できたことを誇りに思います。これまで地域の人たちに助けられ、また助けたりして昨年創立90周年を迎えることができました。本当にいろいろな人たちにこれまで支えられてきたのです。震災当日は雪が降り、突風に見舞われるという大変な天候でしたが、近所の人が子供たちに「寒いだろう」といって着る物を持ってきてくれました。大変感謝しております。

 地震のあと、徐々に車でのお迎えが来て、最後の学生が避難場所を離れたのは夜の9時ごろでした。県外の子がアパートの鍵を教室に置いてきてしまったのです。校舎の安全確認が取れていない現状で、教室に入ることができず、またいろいろな理由で帰ることのできない学生・生徒5人が先生の家に泊まりました。とにかく、学生・生徒全員を守ることができて、本当によかった。地域の皆様や教職員に感謝しているところです。

 ■補強工事始まる

 翌日、校舎に亀裂が入っているのが見つかり、校舎を建て替えるか、耐震補強をするか、専門家にみてもらいました。補強工事で十分ということになり、もう工事が始まっています。国や県にも見積書や写真を送っています。校舎の塀も崩れましたが、とにかく在校生や新入生を預かり、また生活を抱えている教職員を抱えている以上、学校は何としても継続しなければなりません。

 学園の役員が校舎の近くにビルを所有しており、相談したところ「是非協力させて欲しい」ということになり、授業再開のメドがつきました。4月13日に始業式、16日に入学式を開く予定です。工事中は、校舎を使うことが出来ませんが、土日も含めて工事が行われており、復興に全力をあげています。足場を組んだのは、この辺りで本校が最初になりました。

 ■学生・生徒に心のケアを

 学生・生徒はこのたびの巨大地震で大きな不安を抱えており、教職員が一丸となって学生・生徒に対して心のケアに努めなければなりません。保護者にも学校に来てもらい、学校の対応をしっかり説明して、学生・生徒の不安を少しでも取り除いていかなければと考えています。

 今、何をしなければならないか、また今ここでしか出来ないことを念頭に、授業にも大きな工夫が求められていると思います。また学生・生徒に出す課題にしても、これまでの課題とは違ったもの、希望に向けて学生・生徒が前に進めるような課題をどう出していくのか。そして子どもたちの心をいかにつないでいくか、これが問われていると思います。震災があったために、学習の面で学生・生徒が不利益を受けないようしっかり対応していきます。

 土曜日を活用したり、夏休みを短縮したり、緊張感を持っていろいろと工夫をすれば活路は必ず開けると思います。前に進む力、生きる力、つまり実力と自信をつけさせる、教育って本当に素晴らしいことだと思います。この震災を無駄にせず、これを乗り越えてみんなに強くなってもらう、生きる力で、震災を乗り越えられると確信しています。

 ■大震災で価値観も変わる

 先日、ビッグパレットの避難所に行ってきました。3市町村の人たちが避難しており、どの部屋も避難者で満杯でした。知人が避難しており、何か必要なものがないかを聞きにいったのです。2千人近くの避難者を見て、この人たちのこれからが一体どうなるのか。大変な人たちを目の当たりにして、学生達とこの困難をどう乗り越えていくか、ともに考えていきたいと思います。

 都知事のあの“天罰”という言葉は、東北の人にショックを与えました。本当に残念でなりません。お互いに助け合い、支えあい、東北人特有の粘り強さで乗り越えていこうという時に、あのような発言は許されないと思います。原発の恩恵を受けて生活している人は福島にもたくさんいますが、そもそも原発を利用しているのは東京をはじめ、関東の人たちなのです。

 この大震災や原発事故を契機に、これからは価値観も当然変わってくると思います。日本の技術力には素晴らしいものがあり、専門学校で学んでいる学生・生徒には誇りを持ってもらいたいと思います。技術力や専門知識をもって人のため、世のためになる、それが日本のためになるということなのです。これを学生・生徒に理解させることが大切です。

 震災前は、失業者もたくさんいましたが、この大震災で今後の展望がまったく見えない事態に陥りました。こうした時代は、自信につながる何かを身につけておくことが必要です。専門的に何か一つを学び、技術を身につけることだと思います。私は郡山市の教育委員長を仰せつかっており、いろいろな機会にこのような話をしていますが、なかなか受け入れられません。みんなが行くから、みんなが入るからということで進路を決め、本人の目的や適性があまり重視されていないのです。

 ■復興の決意も新たに

 この学校は私の祖父が大正9年に創立したものです。祖父は女学校の教員をしており、公立の学校は校長が代わるたびに教育方針が大きく変わったそうです。やはり一貫した教育がしたい、女性の地位を向上させたいという考えから、この裁縫学校を創設したのです。女性の自立と生きがいが建学の精神だと思います。その精神を受け継いで、4月からは少し授業が遅れても、まずは安全に心がけ、本校の建学の精神を教育に反映させていきたいと思います。

 「がんばれニッポン!がんばれ福島!がんばれ郡山!」という言葉を書いた紙がいたるところに張ってあります。これを合言葉にして頑張っていこうと思います。卒業生に会って私が「在校生も、新入生もいるから頑張るわ」というと、「卒業生のためにも頑張って!」と励まされました。卒業生と本校の絆の強さを再認識したところです。

 福島県民は、地震、津波、原発事故、風評被害の“四重苦”で物的、精神的苦痛を受けています。しかし、私は東北人の粘り強さと強い絆、そして支えあう心を大切にして、90年の伝統のあるこの学校を必ず復興させる決意です。

 大谷石の塀はすべて倒れてしまいましたが、「明るくなってよかった」と発想を転換して頑張って参ります。(談)


復興に向けて補強工事が始まった郡山市大町の今泉女子専門学校の校舎

学園庭園奥にある石造浮彫阿弥陀三尊塔婆(一丁仏)は、相生集に記載されている鎌倉時代の作で、郡山市指定文化財となっている。地震でズレたが、三尊塔婆に損傷はなかった

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