logo 作文コンクール
専門学校新聞ニュース
進路指導の課題と実践
専門学校の賢い選び方
専門学校何でも用語事典
職業カタログ
資格カタログ
専門学校カタログ
リンク集
年間購読申し込み
専門学校新聞社プロフィール
 
■学校基本調査
■イベントナビ
■「私のしごと」作文コンクール
 
株式会社専門学校新聞社
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場
3-20-11
TEL(03)3364-5721
FAX(03)3360-6738
E-Mail:info@senmon.co.jp
東日本大震災情報
東北3県の会長に聞く

東日本大震災を風化させず後世に語り伝えていこう
社団法人宮城県専修学校各種学校連合会 会長 橋本 榮一



 あの日から早いもので一年が過ぎました。

 私たち宮城県民は、近いうちに大地震が起きることをある程度覚悟していましたがとうとう平成23年3月11日、午後2時46分、東北地方太平洋沖を震源とするM9の大地震が発生しました。

 私はその時、学校の執務室におりましたがこれまで経験した地震より桁はずれの大きく長い揺れで書類等は散乱、学生や職員の悲鳴、そして避難誘導、安否確認、…これまでも訓練はしていたものの、様々な対応に追われたことが昨日のように甦がえります。決して忘れることはないでしょう。

 この大地震は、巨大津波を誘発させ、私どもの郷土・宮城県は地震と津波で皆様方の想像を絶する大きな被害を受けました。県内の死者・行方不明者は約1万1200人余で、そのほとんどが大津波に襲われたことによるものでした。県内全域で建物の損壊やライフラインの遮断、更に沿岸部では津波により、建物の流失、水産施設や鉄道施設などにも甚大な被害が発生し、被害額は算定が困難なほど膨大となっております。

 加えて福島第一原発事故による所謂、風評による被害で農水畜産物はもとより観光客の激減、留学生の一斉帰国など多方面にわたり大きな影響が出ており、この影響は当分続くことでしょう。

 大震災に際し、人命の救助や負傷者の救護のため、自衛隊の皆様、全国自治体の皆様、米軍の皆様をはじめ、関係者及びボランティアの皆様には献身的に救援に当たって頂きました。また、人的、物的、生業に未曾有の被害を受けた被災県民に対し、日本及び全世界の人々から心温まる様々な支援や励ましの言葉を寄せて頂きました。この場をかりまして、支援頂いているすべての皆様に心からお礼申し上げます。

 特に、今回の大震災の支援として、全専各連ではいち早く全国の会員校に呼びかけて義援金を募り、被災県の専修学校及び各種学校に二度にわたり多額の支援をして頂きました。また、それぞれの学校からも義援金をはじめ、教材等の支援も受けましたことに対しまして、お礼と感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 あれから一年を経て、全国の皆様と被災地とでは、当然のことながら大震災に対する思いに相当の乖離があると推察しています。一年が経過したといっても、宮城県民にとって大震災は現在進行形であり、地震や津波は過ぎ去ったけれども、膨大な瓦礫の処理、壊滅した街や漁港の復興等々を含め、地震や津波からの後遺症やトラウマからいまだ逃れられずにいるのです。

 被災地が全国から取り残されていくのではないか、あれから一年を経て、そんな思いがしているところでございます。

〜震災から学んだことも多く〜

 3・11を改めて振り返ってみますと、まず電気や水道などのライフラインが甚大な被害を受けたため、電話等での安否確認が出来ない、食料や水がコンビニエンスストアからなくなる、お風呂にも入れないといった状況が長く続きました。しかし、被災した住民は冷静沈着に行動したため、大きな混乱は発生しませんでした。東北人特有の寡黙、真面目そして粘り強さと冷静沈着さは、世界からも高く評価されました。

 とはいえ、やはり教育現場では学生・生徒の安否確認、被害状況の把握、行政への対応などでかなり混乱を生じていたことは確かです。地震発生時から通信手段が遮断され固定電話やFAXは電気が失われたために使えない、携帯も役に立たないという状態が続きました。震災から10日間位は被害実態の把握に努めていたものの、相当の混乱があったかと思います。県連合会としても、発生から3日後には情報の収集に努めましたが、連絡が取れないなど多くの困難に直面し、もどかしさを感じたものです。

 当時、専修学校及び各種学校の半数は卒業式を終えていましたが、済んでいなかった学校は中止したところが多く、入学式も中止や延期、授業再開も遅れ、夏休みを返上して不足した時間を確保したようです。なお、県内の専修学校及び各種学校はほとんど内陸部に位置していたため、現在はほぼ平常に戻っております。それでも、気持ちは震災から離れることはできません。

 このたびの震災対応では反省すべき点が多々あり、また、多くのことを学びました。

i 電気が失われたため安否確認などの情報収集が出来なかったことが第一に挙げられます。

ii 震災当日、多くの学校が春休みということが幸いした面もありますが、全校の学生・生徒が登校していた場合、誘導や避難が迅速に行われていたかどうかという疑問が残ります。

iii 正に日頃の防災教育や管理体制の強化が問われたほか、避難マニュアルの有無や防災訓練、とりわけ一瞬にして全てが失われる津波に対する対応が大切で、慣れや固定観念での行動の恐ろしさを改めて痛感させられました。

iv 更に地震の際に、帰宅困難となった学生・生徒を受入れるための食糧や水の確保、被災した学生・生徒の心のケアの問題なども浮き彫りになりました。

 これら地震対応の問題点等をしっかり分析し、的確に対応していくノウハウは全国の専修学校及び各種学校が共有すべきであると思います。

〜震災からの復興・再構築に向けて、ガンバルみやぎ〜

 宮城県の復興は着実に進んでいますが、今後復旧から復興・再構築に向けて、様々な課題や原発事故の風評被害の払しょくも含め、あらゆる困難を乗り越えて行かねばなりません。

 私たちは、このような中で県民挙げて頑張っています。特に、子どもたちの表情が明るく、「前へ一歩」という気持ちも強いものがあり、子どもたちの方が大人より回復力が強く感じられる点がせめてもの幸いです。

 なお、震災支援として専修学校及び各種学校の復興から再生に向けて、文部科学省や厚生労働省をはじめとする行政から多くの被災地支援策が打ち出されました。校舎等の復旧支援や、今回初めて被災学生・生徒に対する就学支援も認められました。被災地として大変感謝しているところですが、復興支援策の中には、取り組みにくい支援策もないではありません。

 例えば厚労省の求職者支援制度についても、受講者や受託側へのハードルが高く、受講生が集まらないという実態があります。

 とはいえ、こうした問題を乗り越えて震災の復興から再生へ向かうために、医療や社会福祉分野をはじめとして、復興計画を牽引する分野の職業実践教育へ設置学科や科目をシフトし、県民の期待やニーズに応えていかなければなりません。震災から一年を経て、県連合会としても会員相互が一致協力して地域経済や産業の復興に全力を挙げて参る所存です。今後とも文科省、全専各連をはじめ、関係各位のご指導とご支援を宜しくお願い申し上げます。

 結びに、今回の被災は、大地震・大津波・原発事故によるものですが、この他にも枚挙の暇がないほど多種多様な事故・事件・被害が想定されますので、それぞれに的確な対応〔危機管理〕を検討しておくことが必要でしょう。

 最近、地質学者や自然地理学者の話として、首都直下地震をはじめ、東海、東南海、南海を震源域とする巨大地震が近い将来発生する可能性が高いと報じられていますので、今回の我々の経験や教訓を生かしていただければ幸いです。

 被災地の私たちは、今回の東日本大震災を風化させることなく後世に伝えるとともに、大震災から得た様々な教訓を礎として、震災に強い地域づくりをしなければなりません。そして職業教育を司る我々は、それを担う人材を育成することが大切な使命であると考えています。(取材・平成24年2月23日)


[東日本大震災情報]のページの目次に戻る