広島県立西条農業高等学校3年

鹿 島 友 輔
 

「水産業に力をそそぎこめ!」
 
 陸上での農業には限界が見えてきた。これからの主役は水産業だ!

 私の夢は、水産業における研究者になることである。魚類の繁殖や成長を促し、質を向上させる環境について研究したいと考えている。そして、養殖技術を向上させ、日本の水産業の活性化に貢献したいと考えている。

 このような夢を持つようになったことには訳がある。

 日本は今、食糧自給率がたったの40%と深刻な状況で、私たちが食べている食糧の多くを外国からの輸入に頼っている。政治情勢によって輸入がストップしたらどうなるのだろうか。輸入品の安全性は確保されているのだろうか。私たち日本人の食生活は、大きな危険と隣り合わせだ。この現状をどうにかして変えていきたいと思っている。

 私は、農業高校の畜産科に入学し、豚を使って研究を行ってきた。豚は、家畜として優れた能力を持っている。それは、妊娠期間が短く、一度の産子数が平均12〜13頭と多く、また、半年で120kgと出荷体重にまで成長するからである。「それなら養豚業をもっと盛んにして、食糧生産量を増加させれば良いじゃないか!」初めは私もそう思った。

 しかし、それには大きな問題があったのである。豚の飼料のほとんどが外国からの輸入品だったのだ。これでは、国内で食糧増産を行えるどころか、ますます外国に依存してしまうことになる。

 そんな私のターニング・ポイントは、広島大学の海洋研修に参加した時にやってきた。ムラサキウニの産卵、それはまるで体から放出される金の糸。海岸で獲れた貝や蟹、地引き網をして得られた魚たち…、その数や量の多さに驚いた。

 海洋研究開発機構のサイエンスキャンプにも参加した。海底を探査・掘削して得られた深海生物は知らないものばかりで、真っ白な蟹には特に心を奪われた。「水圧が高いにも関わらず、深海底にこんなにも多くの生物が存在している…!」私は、海洋というフィールドに希望を抱くようになった。海洋は、陸上にも負けない生物の宝庫だと知ったからである。今後、海洋が食糧生産の場としてさらに重要な役割を担ってくると、私は考えている。

 海は地球上の約7割の面積を占めており、これを食糧生産の場として使わない手はないのだ。ましてや、地球上の生物の起源は海である。海洋生物の、極めて多岐にわたった生理、生態上の特性を、人間はもっと利用することができるはずだ。

 そのために、私は、水産について学べる大学へ進学し、魚類の飼育環境について研究したいと考えている。魚礁などの海底に沈める人工の隠れ家を、養殖においても応用し、少しでも増殖効率の高い飼育水槽を開発したい。また、バイオテクノロジーによって作られた新たな魚種を、実際の養殖に導入するための養殖システムを開発したり、DNA分析等の技術を応用した病害予防技術を開発することにより、養殖システムの一層の高度化を図りたい。

 現在、養殖されている魚類の飼料は、外国からの輸入品もあるが、全てではない。魚粉や細かく刻んだ魚の切り身が飼料となるため、規格外の魚を有効利用でき、国内で賄っていくことも可能であると考える。世界中が繋がるこの海洋で、海洋生物の恵みを得ていく方法を模索し、日本の食糧自給率を上げることに貢献したい。そのことにより、日本人の食生活における安全性も保たれると信じている。

 まずは自分が第一歩を踏み出し、夢を叶えたい。大きな可能性のある海洋というフィールドにかけてみたいと思う。


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