安城生活福祉高等専修学校(愛知県)3年

松 藤 三千代
 

「ドン底をきっかけに見つけられた夢」
 
 『もう…生きていくのが怖い…』。

 入院中、本気でそう考えてしまっていた私に、生きる力を与えてくれたのは、病院で出た食事の優しい味でした。

 私は小学4年生の頃から料理に興味があり、作る事も食べる事も大好きでした。

 ですから将来は、そのような分野の仕事に就きたいと、ずっと思っていましたが、料理関係の仕事の分野は幅が広く、具体的にどの職業に自分が一番就きたいのかがよく分かりませんでした。

 それがある日、自分が本当にやりたい仕事がハッキリするきっかけとなる出来事が起きました。

 昨年の秋の終わり頃、私は運悪く緊急手術を受けなくてはならない状態になってしまいました。

 手術は無事に終わり、意識も戻りましたが、今まで3回も手術経験のあった私にとって、それは予想もしていなかったまさかの4度目の手術だったので、ショックで心の中はボロボロ状態でした。

 手術により、身体が受ける痛みも相当のものだったため、『例えこれから生きていても、またいつ手術を受ける事になるのか分からないのなら、いっそ死んでしまいたい…。もう、生きていくのが怖い…』。

 この時私は、本気でそう考えてしまっていた…。

 その思いを抱えたまま、手術から3日がたとうとしていた頃、流動食という物が食事として出されました。

 食欲なんて、ちっともわいていなかったけれど、試しにお碗に入っていたポタージュスープを飲んでみると、何だか凄く優しい味がして、美味しさも感じられました。おかげで私は心の中で、『生きていれば、こういう美味しい物を味わう事ができるんだった。これからも頑張って生きてみよう』。

 そう思う事ができ、そのスープを作ってくれた調理員さん達への感謝の気持ちが芽生え、それと同時に、『自分も、病気で元気を無くしてしまっている人達が元気を取り戻してくれる様な、優しい味の食事を作る調理員さんになりたい』という思いも芽生えました。

 つまり私は、病院食を調理する調理師になって、大勢の人の心身を元気にしてあげたくなったのです。

 何度も入院を経験している私だからこそ、余計に患者さんの気持ちが分かるため、まさに天職だと感じました。

 そして、その夢を叶えるためには、まず自分の心身が健康でなくてはならないと思い、私は前向きに退院へ向けて頑張る事ができました。退院当日まで、私の心身をいやし続けてくれた病院食を作って下さった調理員さん達には、看護師さん達以上に感謝の気持ちでいっぱいでした。

 最初は、心身共に凄くショックを受けてしまった今回の入院だったけれど、そんなドン底状態になったことをきっかけに、改めて食事が生きる源だという事に気付きました。また自分の本当の夢も見付ける事ができたので、私にとって転機以外の何物でもなかった様な気がします。

 せっかく見付けられたこの夢をこれからも大切にし、実現に向けて頑張っていきたいと思います。

 私が心を込めて作った料理で、1人でも多くの患者さんが、心身共に元気になってくれることを信じて…。


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