武蔵野東技能高等専修学校 3年

竹 内  夏 菜
 

「笑顔」
 
 「笑顔」――笑顔の中には無限の可能性がある。そう気付いた時、私は教師を志そうと思った。

 昨年の夏、アメリカ・マサチューセッツ州にあるボストン東スクールという学校に私は研修生として2ヶ月間滞在した。ボストン東スクールは自閉症という障害のある生徒があらゆる地域から通っている学校で、生徒達はそれぞれ、言葉がうまく話せない、理解が難しいなど、様々なハンデを抱えている。しかし、そういった問題と真正面から向き合う教育者がそこにはたくさんいた。そして、その教師達は皆、輝く笑顔を持っていた。

 自閉症児教育は一筋縄ではいかない、大変難しい支援教育だ。それぞれ持っている個性が違い、生徒一人とっても出来ることと出来ないことに非常にムラがある。そのため生徒一人一人の特性をよく理解した上で、その子に合わせた指導、支援をしていかなければならない。本当にその子に合った指導、支援とは何なのかを常に模索し、成長に合わせてプランの修正をしていく。この繰り返しだが、指導の成果が見えるようになるまでには、長い時間を要するのである。

 しかし、そういった緻密で地道なイメージとは違い、実際の現場から受ける印象は、まさに“闘い”だ。しかし闘いの中でも教師は笑顔を絶やさない。「何とかしなければ」、その一心で、全力で生徒と向き合い続ける。嫌われても、はね除けられても絶対に見捨てない。

 そしてその想いが実を結んだ時、まるで魔法のような瞬間が訪れる。どうしても出来なかったことが出来るようになった時、ずっと治らなかった悪い癖が治った時、先生方が持つ緊張の糸がふっと緩む。そしてその成長を誰よりも、もしかしたら生徒自身よりも、我が事のように満面の笑みで喜ぶのだ。そして、そうして褒められた生徒は様々な反応を示す。

 ニコニコと嬉しそうに笑う子、誇らしげにしている子、少しはにかむ子、表情に乏しいながらもいつもと違う様子を見せる子…。その時だけ日々の戦いから開放され、その場にいる人みんなが笑顔になる。そして、胸がいっぱいになるような達成感と充足感があるのだ。

 私はそれを目の当たりにした時、はっとした。どんなに成果が見られなくても諦めない理由、心身共に消耗するにも関わらずこの仕事を辞められない理由、その全てが“生徒が成長する喜び”にあるのだと。

 しかし、幸福な時間もあっという間だ。一つの課題をクリアしても、また新たな課題にぶつかる。どこまでやっても終わりが無い。しかし先生方は「生徒は絶対に変われる」ということを知っている。だから、先生方はどんなに険しい道であっても、笑顔を忘れず生徒と共に歩んでいけるのだ。

 私がボストンで出会った先生方のようになれるまでには、まだまだ越えなければならない壁がいくつもあり、きっと悩むこと、くじけそうになることも多くあるだろう。しかしそうした時には、あの時に見た生徒や先生方の笑顔が私の背中を押してくれるだろう。そしていつの日かあの先生方のような教師に辿り着けた時、大切な生徒と一緒に笑いたい。それが今の私を教師という道に突き動かしてくれている“想い”だ。


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