文化学院高等課程 1年

斉 藤 ひかる
 

「勉強を仕事にする」
 
 私が在籍する学校では映画製作の授業がある。前期の課題はドキュメンタリーで私の所属する班のテーマは「冤罪」だった。

 中学生の頃から興味を惹かれていた冤罪。授業を通して、このテーマに対する私の感情は、より具体的なものとなった。

 初めの取材は日本国民救援会。この国で起きた様々な冤罪について、まだ実現されていない、冤罪を減らすための具体的な対策について話を聞くことができた。

 その後は、弁護士と実際に痴漢冤罪被害に遭った人にインタビューをすることが出来た。

 弁護士からは主に足利事件について、また、密室で行われる取り調べと再審の裁判の特殊性について、話を聞くことが出来た。

 そして冤罪の被害に遭った人からは実際に体験したこと、それから裁判員裁判での裁判員の立場について知ることが出来た。この経験が私の将来と冤罪を繋ぐことになった。

 将来、おそらく大学院を出てからだろう。法医の研究員として科学捜査研究所に就職する―これが今の私が考える将来の仕事である。

 理由其の一…理科、特に生物に興味があり、ヒトのDNAや繊維の鑑定、分析をしたいと思っている。それによって様々な事件の真実を明白にしたいから。

 理由其の二…難しい事かもしれないが、「冤罪」を少しでも減らすことが出来れば、と思う。現在の、完全ではないがかなり進歩した科学技術により、きちんとした鑑定結果を出すことで真実に近付くことが出来る。それが冤罪を減らすための一つの方法だと思う。

 今は科学捜査で鑑定すれば解明出来ることが多いが、その一方で、それまでの鑑定技術では今ほど正確なデータを出すことが出来ず、誤って被疑者にされたまま今も尚、無実が証明されていないという事例もある。そう考えると科学捜査で絶対とは言えないが、より正確な鑑定が出来るようになった今こそ、これをきちんと行うことが冤罪を減らすための「初めの一歩」なのだろう。

 冤罪はある日突然、身に覚えのない罪に問われてしまう。そしてそのまま無実を証明することが出来なければ、被疑者とされた人は世間から「犯罪者」という白い目で見られ、職場や家庭にもその影響を与えることになる。とても悲惨で、あってはならないことである。

 だからこそ、私はこの仕事に就きたいと思う。生物を研究することは、ヒトの体の仕組みを知ることが出来るのと同時に、自分の体の構造も分かる。もちろん、ヒトの体だけではないが、このことは実に興味深い。

 好きな事を仕事にするのは良いことだと思う。たとえそれらが義務になったとしても、この職業の場合、仕事をする過程で「研究」が出来る。好きな分野を仕事にしながら研究することが出来れば、仕事は義務というだけのものではなくなる。この場合は特に、たとえ就職することが出来たとしても、常に勉強しなければならないからだ。そして好きなことを学びながら真実を明らかにすることが出来れば、と思っている。


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