国際パティシエ調理師専門学校高等課程 2年

友 田  瑞 穂
 

「職人として」
 
 私は将来、洋菓子の仕事に就きたくて専修学校へ通い、菓子について学んでいる。だが最近方向を転換した。私は洋菓子も好きだけれど、和菓子に魅力を感じている。

 文化というのは、その土地に生きた人々が作り上げてきたものである。そして形の有無に関わることなく、伝承されてきたものだ。島国であり、鎖国もしていた日本では、他の国と比べると、とても独特で特有の文化がある。例えば正座や、おじぎなどは他の国では見られない習慣だ。

 和菓子も数ある文化の一つで、奥の深い歴史をもっている。まだ砂糖も伝わっていない奈良時代に、植物の蜜を穀類や豆類などと一緒に練り上げて、甘い菓子を作る製法が中国から伝わったとされていて、これを起源とするならば約1300年間、和菓子はずっと日本でその文化を発展させてきたのだ。時代が何度移り変わっても、幾人もの人が世代を越え伝えてきたのだと思うと、私は握り拳よりも小さいそれらに、ただ声もなく見入ってしまう。口へ運ぶことももったいない気持ちになるのだ。

 そして、私はそれを受け継ぎ伝える職人になりたい。練り切りなどの上生菓子やどら焼き、きみしぐれなど、シンプルで華やかで私はそれらが可愛いく思えて仕方がない。和菓子職人の匠の技や知恵の数々にも魅了されてやまないものがある。日本人の気質だからこそできる、繊細で小さな芸術品が職人の手で一つ一つ作られているのだと思うと、私は強い尊敬とあこがれを抱く。

 私の家の近くにある小さな和菓子屋さんのおじいさんの手つきは、正に職人芸で、たまにちらりと見る時などは、その度に私は感嘆の声をあげる。

 その店のおじいさんはやさしく、気さくでいかにも和菓子屋さんという感じの人だ。接客のほうは奥さんが行っていて、商品の種類は6品目ぐらいだが、店は昔からあり私が小さな頃から慣れ親しんでいるお店だ。小さいとはいえ、早朝から夕方まで一人で製造するのは大変なことだろう。しかも何年も続けられるのは、とてもすごいことだと思う。

 話をしたとき、おじいさんは「和菓子を好んでくれる若い人が少なくなってきていて淋しいね。」とおもむろに言っていた。「日本の人はお豆さんが大好きなんだけど。」とも言っていて、私はその言葉で和菓子について深く考えるようになった。もしかしたらもったいないことをしているのではないか。身近にある和の文化は、歴史を著しく発展させて現在まで受け継がれてきたのだ。よくよく考えるとすごい事である。

 私は方向性を変えることにした。もっと学び、力をつけ、努力をして、和菓子という文化の技術をものにし、本当の意味で職人になりたいと強く思うようになった。自分の子供が、あこがれるような大人になりたいと、いろいろな意味で思った。


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