埼玉県立川越総合高等学校 2年

根 岸  か な
 

「私の夢!『食の大切さ』を伝える仕事がしたい!!」
 
 「あ〜、お腹いっぱい。もう食べられないや!」

 友達がそう言って食べ残した給食を残飯入れに捨てます。それを見るのがとても嫌でした。私の家では、食肉を加工、販売する精肉店を営んでいます。私が通った小、中学校の給食で使われる肉も、私の家で配達した肉が使われています。給食の配達のため、父たちは毎朝暗いうちから鶏、豚、牛などの肉を捌(さば)きはじめます。

 父は、「人の口に入るものだし、衛生には十分注意しなければいけない。」と、仕事を始める前に、きれいに洗濯された白衣に着替えて念入りに手を洗い、仕事を始めます。冬場などは、肉が傷むのを避けるために、加工場では暖房も使いません。冷蔵庫から出した肉を、手が冷たいのを我慢しながら捌(さば)いていくのです。また、私が小さい頃までは、祖父がブロイラーの育成もやっていました。実際に雛から育て、解体して肉に加工するところまで手伝ったこともあります。

 祖父は鶏の首を切る前に、必ず手を合わせてから解体を始めます。祖父は、「こうして自分たちのために死んでくれるものに『命をいただきます』ということで手を合わせるんだよ。だから、ご飯を頂く前にはいつもその気持ちを持って手を合わせ『いただきます』と言わないといけないよ。」と教えてくれたことがありました。

 私は祖父の言葉を聞いてから、必ずご飯を食べる前には手を合わせるようにしてきました。私がこのような環境で育った事もあり、食べきれずに平気で捨てられてしまう食べ物を見ると、「私達のためにこうして命をくれて食べ物になっているのに…なぜ食べ物を大切にする気持ちが持てないのだろう?」という気持ちをずっと持っていました。

 そうしたなかで、私も父たちのように食品に関わる職業に就き、多くの人たちに食べ物の大切さを伝えたいと思うようになりました。そして、食品や畜産、農業が勉強できる川越総合高校へ進学しました。

 私は、入学後に勉強していく中でたくさんの事を知ることができました。例えば、畜産の授業で家畜飼料用のトウモロコシを栽培したときは、種まきや除草、肥料管理や害虫の駆除など、餌となる一本のトウモロコシを手に入れるために、こんなにも人の手がかかっている事を初めて知ったのです。鶏や豚、牛などが、私たちのために提供してくれる肉を作るためには、餌となるたくさんの穀物が必要となります。私はそれまで、ただ肉を残すのはもったいないとしか思っていませんでした。しかし、肉を残すということは、それと同時にその肉を得るために家畜が食べた穀物も、またそれに関わったたくさんの人の労力も、無駄にしているということに気付きました。

 多くの人がそれに気付かず、自分たちが思っている以上の物を無駄にしているのです。このことに気付いてから、私の「食の大切さ」についての思いが一層強くなりました。こうして、たくさんの事を学ぶ中で、将来実現したい夢を見つけることができました。それまでは、漠然と食品に関わる仕事に就きたいとしか思っていませんでしたが、いまは、自分で料理教室を開きたいと考えています。

 父たちが加工してくれた食肉を使い、また学校で学んだ知識を活かし、自分で野菜を栽培して、その材料で料理を教えていきたいと思っています。ただ料理を教えるだけでなく、習いに来てくれた人たちと食肉加工の現場を見学したり、野菜を実際に栽培してもらい、自分たちが食べているものがどのように生産されているのかを知ってもらいたいと思います。

 私は、一人一人の意識が変わることで、捨てられ無駄になってしまう食べ物を少なくすることができると信じています。私の夢である料理教室を通して、父たちが私に教えてくれた「食の大切さ」を、一人でも多くの人に伝えていけたらどんなに素晴らしいだろうと思います。私の夢を実現するためにも、こらからもたくさんの事を学んでいきたいと思います。


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