国際パティシエ調理師専門学校高等課程(東京都) 2年

佐 藤  夢 奈
 

「いつか父のように、そして輝く人に」
 
 尊敬する人は誰かと問われるなら、私は迷わず父と答える。

 私の父は金融機関で働いている普通のサラリーマン。私は将来父のような仕事人になりたい。

 金融機関の仕事は簡単に言ってしまえば人からお金を預かったり、貸したりする仕事だ。何をしていても、お金が関わってくる仕事だからトラブルは日常茶飯事である。父は毎日トラブルと戦いながら仕事をこなしている。しかし家庭での父は仕事でどんなトラブルが起きてストレスが溜まっていても、決して家庭の中、家族の前では仕事での感情を持ち込まない。それは当たり前のように思えるが実際はなかなか出来ないことだと思う。私は父の仕事での顔を知らなかった。

 ある時、私は父の普段目にしない顔を見た。それは父と図書館に行った時のこと。私が本を手にして父の所へ戻ると、父は真剣な表情で株価の変動を見ていた。私は初めて見た、普段家では見せる事のない父の表情に驚いた。けれど後々考えてみれば、あれは父の仕事人としての顔だったのだ。私はその時、初めて父の仕事人としての顔を知ったのである。

 その日から私は父への思いが変わった。仕事に対する真剣なあの瞳を見てから、父を心から尊敬するようになり、父のその真剣な姿勢は私の理想となった。

 そしてもう一つ尊敬する部分。父はとても知識が豊富。私が何を質問しても大抵答えが返ってくる。しかも答えだけではなく、決まって補足の説明が加わるから通常の答えの3倍になって返ってくるのだ。

 ある日、私は知り合いの社会人の話しを聞く機会があった。その人は色々な話をしてくれたが、その中で私が一番記憶に残っている話がある。

 「パチンコ玉が何故あんなにピカピカか知っていますか。パチンコ玉は沢山の玉の中でお互いに磨き合っているから、あんなにピカピカなんです。もしその玉が一つだったらあんなに光ってはいられません。くすみます。錆びます。人も同じなんです。人も沢山の人の輪に入り、お互いをお互いで磨き合っているんです。その中で沢山のことを知り覚えていきます。そうしてどんどん人としてピカピカに輝いていくのです。」この話しを聞いた時、私はすぐに父を思った。父は沢山の人と関わって磨き合って今の知識がある。そう気づいた。

 そう気づいたとき、私は父のように沢山の知識を得たいと思った。それと同時に色々な事物、人と関わり成長していきたいと考え始め、必ず将来その知識を活かしていくと決めた。

 だから私は今も、また将来も、沢山のことを学び知識を得ていく。沢山の人達と関わり、輪に入り、その人達個人の沢山の思い、違った色、知識を吸収しそれを自らの糧として未来に役立てたい。

 父への尊敬はいつからか理想へと変わっていった。私は必ず父のような仕事人になる。仕事に対して真剣で、そして知識が豊富な人として、父のように立派な感情の持ち主に。

 「どうせ無理」「やるだけ無駄」そんなことを思う人にはなりたくない。父の言葉はいつも胸の中にある。「無駄なことなんて一つもない。やって努力することが一番大事なんだ。」この言葉を大切に私は前に進んで行く。

 いつか必ず、沢山の人達の中で輝く存在になれるように。私は父のように真剣に学び、そして努力を怠らない。


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