岩手県立水沢商業高等学校 3年

千 葉  夏 美
 

「人を元気にすること」
 
 あの悪夢のような東日本大震災が発生してから、私たちの生活は大きく変わりました。スーパーの電気が消され、テレビでは毎日のように各地の地震による被害が放送されています。私たちはまたいつ起こるかわからない地震に怯える日々を送っています。しかしながら、そんな私たちを支えてくれる人がいることを忘れてはいけません。人の働く力は人を元気にさせてくれるということを、私は今回の震災から学びました。

 私は、学年が上がるにつれて、「働く」とはどのようなことなのかと真剣に考えるようになりました。学生である自分も、いずれ働くことになることはわかっています。しかし自分がしたい仕事はどれだけの人のためになるのか、それは本当に自分に合った仕事なのかという疑問で、あまり「働く」ということに真正面からぶつかれていない自分がいました。

 私は専門学校で学んでから就職することを考えています。私には医療の現場で働き辛い思いをしている患者さんを笑顔にしたいという夢があります。しかし、一度これを諦めてしまおうと思ったことがありました。高い学費により両親に負担をかけてまでその夢を追うべきなのか、自分には他に合う仕事があるのではないかなどという考えからです。このように悩んでいた時、私は自分の進路についての考えの甘さを改めて認識しました。

 被災地では働きたくても働けない人や、進学するという夢さえ叶わなくなってしまった人がたくさんいます。それなのに、真正面から進路に対して向かいもせず、言い訳をして簡単に諦めてしまおうとしている自分がとても情けなくなりました。もともと「諦める」という言葉が嫌いですし、被災者の方の分まで自分が働き、周りを幸せにしなくてはならないという使命感にかられました。この時、私は働くということは自分のためではなく、周りのために努力することであるということに気づきました。私は、自分の夢を諦めず、将来人のために働くんだという気持ちになることができました。

 また、震災後に、私は多くの人に支えられて生きているということをとても強く感じました。停電により信号機が動かないため、交通整理をしている警察官や、見回りに来て下さる役場の方、外で販売するスーパーの従業員など、私たちの安心できる生活のために働いて下さる方がたくさんいました。その方達のおかげで、震災の中でも私はあまり不自由することなく生活することができたのだと思います。この方達がいなければ、私だけでなく、とても多くの方が困ったことでしょう。テレビを見ていると、被災地で辛い思いをしたにも関わらず仕事に励む方がたくさんいました。船が流されても海の仕事を続けたいと復興に向けて汗を流す人々の姿を、私はたくさん目の当たりにしました。この人は自分の仕事に誇りを持っていたんだと思い、私もそう思える仕事を手に入れたいと改めて考えさせられました。そして、私は働く人々の姿は周りに元気と勇気を与えることができるということを知りました。今、復興に向かっている被災地にとって、働く人々は必要不可欠な存在であると言えるでしょう。

 私はこの震災により、「働く」ことの意味を改めて感じることができました。進路について悩んでいた自分にとっても大きな一歩になりました。仕事に対する思いは人それぞれですが、どんな仕事でも必ず人のためになっています。そして、私たちは、働く人々の姿から希望をもらうことができます。被災者の方が復興に向けて努力しているのと同じように、私も努力を忘れない職業人になりたいと思います。そして、他の人を元気にすることができたら、私の夢は叶ったと言えるでしょう。


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