横浜デザイン学院高等課程 3年

信 久  白 佳
 

靴を作る仕事
 
 靴は、私たちにとって無くてはならないものである。外を歩いている人は、必ずといっていいほど履いているし、また履いていることが常識だ。私だって履いている。生活必需品なのである。

 昔は外国と戦争で戦うために、下駄や草履では当然戦いにくいからと、軍人が靴を履いた。そのころ靴は手縫いで1足作るのに時間がかかっていたが、ドイツが生み出した接着剤のおかげで、手で縫う作業が減り大量生産できるようになった。

 今ではファッションの一部として考えられ、革だけでなく、合皮や布、ゴムなどの素材も使われている。かかとの高い「ハイヒール」や運動に適した「スニーカー」、海辺で履く「サンダル」などたくさんのデザインがあり、それらはほぼ大量生産でコストを抑えられ、どこでも買えるようになっている。外で履くものだけではなく「ルームシューズ」などもあり、靴の産業に終わりは見えない。現在も奇抜で新しいデザインのものが作り出されている。

 しかし、こんなに靴があるのに「本当に自分の足に合った靴」というのにはなかなか出会えるものではない。経験したことはないだろうか?新しい靴を長時間履いていて小指の皮がむけてしまったり、足首が異常にすれたりマメができる……など。女の人はハイヒールをよく履く人が多いので、「外反母趾」などの足の病気になるということもあるのだ。私もつい最近新しい靴で出かけたらかかとをすりむいてしまった。お店で買うときに、ためし履きするだけでは、自分の足に本当に合った靴は見つけられない。自分に合わなければ大量に靴があっても意味が無い。

 そういった問題を解決してくれるのが、「ハンドメイド」の靴だ。職人が足の型を取り、一から革を裁断し足に合うように作ってくれる。「履き心地」を第一に考え作られるハンドメイド靴は、履けば履くほど足になじむ。靴が足の形になってくれるのだ。私はこの仕事を知って「なんて素敵な職業なんだろう!」と感じた。靴を作ってもらおうと思ったお客さんはきっと、特別な思いを抱きながら依頼するに違いない。その特別な思いを汲み取って作り出す職人に憧れる。

 私は実際に作ってみたいと思い、靴作りを体験した。教えてくれた先生は「これは一番簡単な靴の作り方だ。」と話していたが、それは大変難しい作業だった。革をひと針ひと針縫い、靴の木型に革を合わせてその形に伸ばしていく。釘を打つ「つり込み」という作業があるのだが、とても小さなやわらかい釘を打つので曲がってしまうことが何回もあった。何度も何度もやりなおし、私は顔を真っ赤にするぐらい集中した。すべて打ち終わったときの感動は言葉に出来ないものであった。靴を完成させたときはもちろん嬉しかったし、これを職業にすることを想像してまだ早いとは思うが「お客さんも同じくらい嬉しいのだろうな。」と感じた。

 このごろは靴屋で革靴などを見ると立ち止まって、ジッと見てしまうこともしばしばだ。製法やデザインの種類などもどんどん知りたくなり、独自でだが勉強を始めた。難しい単語などがたくさんでて頭がこんがらがることもあるが、そこはなんとかやっている。

 私はこの学校を卒業したら、靴の専門学校に通ってハンドメイド靴を学ぶ。靴はこれからどのように進化していくべきか、そしてハンドメイド靴をどう普及させていくかを考えたい。合っていない靴を履いて苦しんでいる人に『本当に合った靴』を届けたい。『本当の履き心地』を感じてもらいたい。世の中の人たちに良い靴を履いて気持ちよく歩いてもらうことが私の夢だ。


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