栃木県立宇都宮白楊高等学校 2年

手 塚  千 晴
 

大好きな花に囲まれて
 
 赤、黄、ピンク、紫…、もっともっと言葉では言い表せない繊細なグラデーション、だけど全て綺麗な色。花にはいろんな色があります。甘い、みずみずしい、つんとする、そんなようなたくさんの匂いがあって、また、見た目も本当に様々。私は、将来、花に関する仕事に就きたいと考えています。

 農業には、様々な分野があります。私は栃木県立宇都宮白楊高校の農業経営科に在学しており、現在農業の勉強をしています。農業経営科では、大まかに分けて作物、畜産、野菜、果樹、そして草花などの分野の学習をします。そのような様々な分野の中で私が将来携わっていきたいと考えている「草花」は、他の分野にはないある特徴があります。それは、「食べられないこと」、そして「見ているだけで幸せになれること」です。草花は他の分野とは違い生きるためのエネルギーにはなりません。しかし、生命力溢れる美しい姿は見ているだけで幸せな気持ちになります。そこに存在するだけで心を穏やかにするのです。草花は体の栄養にはなりませんが、心の栄養そのものです。

 みなさんは、フラワーパークや植物園に行ったことがありますか? 私は先日、インターンシップという職業体験学習のため、足利市にある「あしかがフラワーパーク」というところで1週間仕事を体験させていただきました。私は草花が好きなので、それらの場所もとても好きです。フラワーパークに行くといつも、たくさんの草花を見て感動したり感心したり驚いたり、帰る頃にはとても幸せな気持ちになっています。そんな大好きなフラワーパークで職業体験をさせていただけることになったので、私はインターンシップに行く前から嬉しい気持ちでいっぱいでした。

 実際に、フラワーパークではアジサイやバラの剪定を行いました。大好きな花に囲まれながら花の手入れができるなんてこれ以上幸せなことはありません。私は5日間片道一時間半かけてフラワーパークに通いましたが、まるで苦になりませんでした。苦にならなかった理由は、大好きな花があるからというだけではないのです。それは、花を手入れする仕事ではない部分に感じたやりがいにありました。

 フラワーパークでの仕事は、花を手入れすること以外にもたくさんあります。例えば、スイレンの咲いていた池の泥を運び出し、水をまいてきれいにしたり、咲き終わった花菖蒲の鉢を片付けたり、たくさん土の入ったプランターを運んだりと、体力のいる重労働です。それらの仕事は直接花に関わらない、疲れる、汚れる作業です。しかし、美しい花で満ちあふれたフラワーパークを作るためには欠かせない大切な作業でもあります。

 私は、常に美しい花を展示し見る人を喜ばせるために必要なこの仕事にとてもやりがいを感じたのです。フラワーパークの花は私をとても幸せな気持ちにしてくれます。でもそこで私を幸せにするものは草花だけではありません。そこに訪れている人たちです。驚いて歓声を上げる小さな子ども、手をつないで「綺麗ね」と微笑み合っている歳とった夫婦。草花を見ている人たちは、笑顔になり、とても幸せそうな顔をしています。それを見て私は、さらに幸せで、そしてなぜだか少し誇らしい気持ちになるのです。そんな訪れた人を幸せにするフラワーパークを作る作業に関われたことが、嬉しくて仕方がありませんでした。

 私は、人を幸せにできる草花という農業の分野を、今学んでいることをとても嬉しく思います。草花なんかにお金をかけるなんて無駄だと言う人もいるかもしれません。でも、草花はあるだけで人を幸せな気持ちにし、それは時に贈り物として人に気持ちを伝えたりもできる素晴らしいものです。私は、そんな素敵な草花を慈しみ育てられるような仕事に就きたいと考えています。美しい花に囲まれて人々を幸せにする、そんな職業人になりたいです。


[閉じる]