拓殖大学第一高等学校 1年

横 田  佳 都
 

心に寄り添う医療を目指して
 
 私の将来の夢は医師になることです。5歳のときに、ある脳外科医の先生を知ってから、ずっと医師の道を志しています。自分の手で人間の脳や心臓を開き、正常な状態に治す技術はまさに神技です。もし自分が医師になれたら、人の命を救えたらこれ程の喜びはないだろうと思っていました。しかし、ある出来事をきっかけに、私の目指す医師の姿が高度な技術を持つ医師ではなくなりました。

 私の祖父母は新潟に2人で暮らしています。2人共、88歳と87歳という高齢ながら、お互いに支え合って元気に生活していました。しかし、ある日突然、祖母が台所で転んで頭を打ったと、電話がありました。幸い大事には至りませんでしたが、話によると頭を打った直後は動揺して誰に助けを求めれば良いのか分からなかった、ということでした。

 これを聞いたとき私は、地域医療の活性化の必要性を感じました。私の近所にいる「かかりつけ医」の先生は、とても気さくな方で緊急の場合は24時間、いつでも診て下さり、電話をすれば自宅まで来て下さいます。この先生のおかげで、特に1人暮らしの高齢者の方は、毎日安心した生活が送れていると思います。

 しかし、こうしたかかりつけ医の先生はあまり多くないことが現状です。もし、このような先生が各地域にいれば、今回のように突然誰かが倒れても、しっかりとした対応が迅速に行われ、遠くに住んでいてすぐに駆け付けられない家族も、安心して任せることができます。少子高齢化が深刻な問題になっている我が国において、地域の高齢者を支える面で、かかりつけ医の存在は、とても大きいものなのです。

 また、地域医療の活性化により、近年問題になっている軽症患者の救急車の乱用も防ぐことができます。ケガや病気になったとき、まず1番に安心して頼れる存在が身近にいれば、むやみやたらに救急車を呼ぶ必要がなくなるからです。そうすることで、重症患者への手当てが迅速にでき、搬送時間が短縮されて、死亡率が低下するはずです。

 このように、地域医療の活性化には様々な利点がありますが、最大のポイントは他にあると私は考えます。それは、患者さんの心に寄り添う医療が行えるということです。

 祖母が倒れた数日後、母が新潟へ様子を見に行きました。やはり頭を打った直後は異変が見られなくても、数日経つと少し痛みを感じるようになったため、病院へ行ったそうです。しかし、大きな病院で患者がたくさんおり、軽症の祖母は何時間も待たされ、いざ呼ばれたと思ったら、ろくに話も聞かずに検査ばかりして、薬を大量に出されたと話していました。

 もし祖母が、かかりつけ医の所に行っていたら、祖母のことを良く知る先生が、過去のデータと照合して、祖母の話を親身に聞きながら、体質に合った良い薬だけを処方して下さったはずです。

 何年もお世話になっているかかりつけ医の先生だからこそ、安心し心を開いて相談できることは、たくさんあります。特に1人暮らしの高齢者などは、どんなにたわいのない話でも笑顔で聞いてくれる医師の存在を、とても必要としているはずです。そういう信頼された医師による、地域に根づいた医療こそが安心して暮らせる環境を創っていくと思います。

 日本の社会が変化する今の時代、より良い社会創りのための1つとして、この地域医療の活性化があります。私にできることは少ないけれど、自分の目指す、心に寄り添う医療を医師になって患者さん一人ひとりに提供し、心温まる地域創りに貢献したいです。


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