八戸工業大学第二高等学校 3年

名古屋    唯
 

本と出会って
 
 私は将来、多くの人々に本を提供する図書館司書になりたい。

 小学校1年生の時、夏休みの読書感想文を書くための本を探しに初めて市内の図書館へ行った。祖母に連れられて入った図書館には今まで見たこともないくらいの大量の本が、色とりどりの背表紙を行儀良く並べて私を迎えてくれた。初めて足を踏み入れた未知の世界と大量の書物に、まるで冒険家になって隠された秘密の書を探すかのように端から端まで本を読み漁ったのを覚えている。

 その時から私は本が大好きになった。面白い話を教えてくれる友達のような本、まだ知らないことを教えてくれる先生のような本、社会のルールや人のあり方を教えてくれる母親のような本……。そんなたくさんの本たちに出会いたくて、私は小学校、中学校、高校と図書委員会に入った。

 高校2年生の秋には、図書委員の代表として、市内で開催されたリーダー研修会に参加することになった。だが、実は当時、私は校内の図書館利用者数の減少について悩んでいた。本校の図書館は本の種類も多く、文庫本から郷土資料まで幅広く取り扱っている。全校生徒には追加購入希望図書のアンケートを取ったり、先生方のおすすめの本を追加したり、様々な工夫をしてきたが利用者がいないと本もただのかさばる紙束になってしまう。このような状況に悩んでいた時に研修会に参加したことは、よい刺激を受けることが出来たし、私にとって好都合であった。

 研修会では、他校の図書委員が集まって意見を交わしたり、市内の図書館から司書の方を招いて講演を聞いたりしたのだが、私はこの講演がとても心に染みた。

 講演をして下さった佐藤さんは、現代の図書館の役割であったり、今話題の電子書籍の批評など、現代社会における図書館のあり方を詳しく話して下さった。

 佐藤さん曰く、図書館は人々が本と出会う場であり、そこには年齢制限もなければ貧富の差もない、いわば「公園」のようなものだそうだ。幼稚園児からお年寄りまで様々な世代が集まり、気になった本を手に取り、聞き、自分の世界を広げる。思い返すと私も、初めて図書館で本を読んだ時から、知らなかった言葉を覚え、様々な世界に触れ、知識を蓄えてきた。私は佐藤さんのこの考え方に強く共感した。そして、多くの人に本と触れあう喜びを知ってもらいたいと思った。

 私の住む八戸市では、「本のまち八戸」と題し、市民が本と触れあう機会づくりに積極的に取り組んでいる。例えば、八戸市民で生後90日〜1歳未満までの赤ちゃんを対象に親子関係の構築を目的とした絵本のプレゼントを行ったり、市内の小学生を対象に、市内の書店で使用できる「マイブッククーポン」の配布をし、自ら本を選び、購入する体験をさせたりしている。

 しかし、八戸市だけでなく、もっと広い範囲で見てみると、本のことまで手がまわらない市町村が多くあるのが今の日本の現状でもある。私は「本のまち八戸」で生まれたからこそ、そのような市町村で司書という職業を通して多くの人と繋がり、自分が幼い頃に感じた本の温もりを感じてもらいたいのだ。そして、その市町村にある図書館を活性化し、人々の憩いの場になるであろう「公園」を生み出していきたいのだ。もちろんこの夢は1人では叶える事が難しいが、自分に出来ることから少しずつ始めていこうと思っている。

 私は、昨年10月から週1回、研修会でお世話になった佐藤さんが勤めている図書館でボランティアとして実際に司書の仕事を体験させて頂いている。自分が直に体験してみると、思っていたよりも力仕事であったり、人と接する機会が多かったりと、大変な面も見えてきた。それでも私の情熱は変わらない。

 現在も私はボランティアに通い続けている。

 素敵な司書になるために。


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