大阪府立だいせん聴覚高等支援学校 3年

道 幸  悠 生
 

私の将来の夢ときっかけ
 
 私の将来の夢は「医師」だ。この大きな夢は小学生の頃から持ち始めた。

 最初は漠然とした「憧れ」から抱いた夢だったが、今では自信を持って「夢は医師だ。」と言える。きっかけはある一人の医師との出逢いと1つの出来事だ。

 私には聴覚障がいと上肢障がい、咀嚼障がいがある為、幼い頃から何十回も手術を経験してきた。特に咀嚼障がいの為の手術が多く、もう既に手術回数が自分の年齢の数を超えてしまっている。咀嚼障がいの手術を初めてしたのは4歳の頃だ。その頃はまだ大阪ではその手術が出来ず、長崎大学病院に入院することになった。

 私はそこで顎関節の延長手術をした。今までに4回したことがあるが、同じ障がいの人でも、私と同じ病院で診てもらっている人でも、上手くいく人は1度だけの手術で出来る人もいる。私の場合は手術をしても、すぐ顎関節同士がひっついてしまうのだ。顎関節同士がひっついてしまうと、口が開きにくくなる。

 しかしその分入院回数も多いので、他の人よりその病院やその病院の医師達と関わる機会が多い。

 そこには私が4歳の頃から診て頂き続けている医師がいる。彼は私が4歳の頃からずっと教授なので、十年以上教授をし続けている。

 私はそこ以外の病院にも通院している。だが、そこ以外の病院で働いている私の周りの医師達は、地位が上になればなるほど幼児には経過を診る時くらいしか関わろうとしない。幼児には何も説明せず、親にだけ説明することが多い。確かに幼児は言葉をあまり知らない分、説明するのは大変だ。幼児に説明するより、親にだけ説明した方が時間もかからない。

 しかし幼児だって人により大きさは違えど、必ず不安は抱いている。それは医師が信用できないとか、手術経験が多いから不安が全くないということではない。

 幼児は親から説明を聞けば良いと言う人もいるかもしれないが、幼児も親より医師から説明してもらいたいのだ。

 それは親が医学生より医師に説明してもらいたいと思うのと同じことなのだ。幼児のその想いに気づいている医師は、殆どいない。

 しかし、彼は違った。私が4歳にも関わらず、出来る限り私にも分かるよう説明してくれた。術後1週間以上が経過しても、毎日様子を診に来てくれた。医師にとっては一人の患者でも、患者にとったら医師の存在は、とても大きい。だから診に来てくれると嬉しいし、彼は後の3回の手術をした時も変わらず診に来てくれた。

 彼に出逢うまで多くの医師と出逢った私でも、そういう医師と出逢ったのは初めてだった。「この先生良い人だな」初めは、彼のことをその程度にしか思っていなかったが、徐々に偉大だと思うようになった。

 彼は3月で定年し、別の病院長をすることになった。そのことにより、私の中で彼への今までの感謝の気持ちが一段と大きくなった。また、患者にそんなにも感謝される彼を、とても尊敬するようになった。親も尊敬しているが、「最も尊敬している人」を聞かれれば、真っ先に彼の名を挙げる。

 これから医師を志す人、今医師の人には親だけでなく幼児にも出来る限り説明してあげ、少しでも不安を取り除いてあげてほしい。

 医師は、精神的にも肉体的にもしんどい仕事だ。夜勤や土日出勤もある。夜遅くまで働き、朝も早い。決して楽な仕事ではないし、中途半端な気持ちでは人命は預かれない。しかしその分患者に感謝されると嬉しいと思うし、彼が私にしてくれたように私も少しでも患者の不安を取り除いてあげたい。患者に「この先生なら大丈夫」と思われるような、患者に感謝してもらえるような医師になりたい。患者に「ありがとう」と言ってもらえるような医師になりたい。

 いつの日かそういう形成外科医師になれることを目指し、今は受験に向け勉強を頑張りたい。今の学力では厳しいがやらないと必ず後悔する。時には挫けそうになる時もあるかもしれない。その時は彼が私にしてくれたことを思い出し、頑張りたい。


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