拓殖大学第一高等学校 1年

安 食  春 花
 

私の理想とする職業人
 
 将来の夢は何ですかという問いに答えられることができたのは私が何歳の時までだろうか。今の私には夢がないわけではないのだが、仕事という人生の大きな一部を大きすぎて抱えきれていないのだ。進路について考える時、例えば文理選択でも、科目の得意不得意よりも生き方つまり仕事につながるかどうかで決めることが大切だった。もう自分の理想の生き方を見つけた人は自信を持って決断していたし、なぜかかっこ良く見えた。私は、せっかく働くのなら自分の興味がある事をしたいと思っているが、何がしたいかわからない。仕事について私は今まで肯定的に受けとることができなかった。

 そこで私は、一番身近にいる「仕事」をしている人である父に話を聞いてみることにした。正直、父と仕事や生き方について話したり、父の現在に至るまでの話を聞いたりすることは初めてだった。なんだか照れくさくて真面目に将来の話をしたことなど今までなかったのだ。そのためか父の新しい発見が多くあったのだ。父の仕事は「建築家」で、お客さんとどんな家でどんな生活を送りたいか、どうやって家をつくり上げていくかを話し合ったり工事の現場をまとめたりしているという。私の目には、父は自分の仕事に誇りを持っていて、何より楽しいと感じていると映った。

 次に、父の学生時代の話も聞いてみた。父は自分の将来についてどんな風に考えていたのだろうか。すると、父も私と同様で高校1年生の頃はまだはっきりと将来の自分像を描けていなかったらしい。父は野球部に所属し、部活に汗を流していたという。将来何で食べていこうかなんて、考えたこともなかったよと父は笑顔で言っていた。

 しかし、建築家になると決断した後の努力は、言葉だけのものではなかった。建築士の資格を得るために今までで一番勉強した、そのせいで視力も落ちたと言っていた。今までそんな父を知らなかった。本人も、今こうやって仕事にやりがいを感じ、一生懸命向き合うことができるのは、あの時努力をしたからだと言った。将来の仕事のことで悩んでいる私に、焦って今決めなくてもいい、そうやって将来の自分について考えることだけでもとても意味のある事だと言ってくれた。私は父のように仕事に向き合いたい。私の理想の職業人は父である。

 今、私にできることは何だろうか。父の話を聞いて私は、それは勉学に励み多くの物事に興味を持つことだと思った。学校での勉強は学生時代しかできない。今いる環境で精一杯がんばること、そして部活でも勉強でも何か一つに打ち込み努力することは将来何らかの形で役に立つだろう。そして興味のアンテナを張っておくことで、自分の知識・可能性そして世界が広がるだろう。そして多くの事に興味を持つのも今の学生時代が一番適していると思う。自分を見つめ直すと同時に他者を知る。他者を知る事で自分というものが確立していくのではないだろうか。

 将来の夢は何ですかという問いに私はまだ具体的には答えることはできないが、それでもいいと思えるようになった。大事なのは、自分の生き方について考えることだ。それは自分自身を見つめ直すこととも言える。多くの人と出会い、多くの事を知り、多くの経験を積んでいくことでまた自己発見できる。今を精一杯生き、努力をすることは将来につながっていくだろう。私の理想の職業人の父に少しでも近づけるように、今できる事から意欲的に取り組んでいきたい。


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