千葉県立鶴舞桜が丘高等学校 3年

渡 邉  恭 匡
 

ふるさとを守り、伝える。次の世代に
〜コース管理技術者として〜

 
 私の住んでいる市原市は北部に工業地帯が広がり、南部には自然豊かな房総丘陵が広がっています。その丘陵を縫うように清流・養老川が流れています。私の故郷、高滝地区は市原市の丘陵部にあり、自宅の前には養老川が流れ、裏山にはうっそうとした雑木林が広がり、自然豊かな住環境を形成しています。昔からわずかな平坦地に水田や畑を作り、山からは自然薯やワラビ・笥などの山の恵みを得る生活を送ってきました。

 残念ながら高滝地区にも少子・高齢化が押し寄せ、人口減少が続いています。ですが私はこの豊かな自然環境と田舎らしい景観、そして養老川が大好きです。この自然環境と景観、養老川を守り、次の世代に伝えることが私の夢です。

 その夢を叶えるため、自然環境を守っていく方法と手段を千葉県立鶴舞桜が丘高校で学んでいます。現在は緑地管理コースに所属し、ターフ管理や環境創造デザインなどの専門教科の学習に励んでいます。学習を進めていく中で、緑に囲まれた清流・養老川の環境を守ることの重要性を知りました。適切に管理されている環境は景観を維持することが出来ます。しかし、管理の行き届かない環境は景観を維持することが出来ずに、やがて荒廃してしまうということです。つまり、養老川の環境も適切に管理していかなければならないことを学びました。そこで、現在も自治会で行っている養老川の草刈り作業や川掃除に多くの住民が参加し、地域全体で養老川を守っていくことが大切な鍵となります。

 私は学校の実習で学習した刈り払い機の取り扱い方を生かし、高校入学以来この活動に参加しています。刈り払い機を使い始めて2年余り。ようやく扱いにも慣れてきました。しかし近所のおじさんたちのように斜面の草を上手に刈る“達人技”にはとても及びません。学校の実習や家での手伝いを通して刈り払い機の使い方を上達させていきたいです。そして、これから先も草刈りや川掃除などの活動に積極的に参加し、今ある養老川の環境を次の世代に引き継げるよう私にできることを精一杯頑張っていきたいと思います。

 しかし、将来に向けて養老川を守り、次の世代に確実に伝えていくためには私自身がこの土地に留まり、活動に継続的に参加していかなければなりません。つまり、この市原市近隣で就職し、生活することが重要です。そんな私にとって、将来を決定付ける出来事がありました。地元のゴルフコースで開催されたプロ選手の大会にコース整備のインターンシップとして参加できる機会がありました。

 コース整備は選手がいなくなったホールから順番にバンカーの土をならしたり、ラフの芝の長さを規定どおりに変更したりしました。一緒にコース整備を行ったコース管理の社員は偶然にも本校のOBで、気軽に会話をすることができました。しかし、いざ作業になると一瞬にして笑顔が消え、真剣な眼差しで刈った芝生を確認していました。「プロの選手たちが最高のプレーをするためには、俺らキーパーが最高のコースを整えてあげる。これがプロの仕事でしょ。」この言葉に今までに感じたことのない衝撃を受け、私の全身を何かが突き抜けたような感覚になりました。

 私はこの経験で進路を決めました。高校卒業後は、現在学習している専門教科の内容を生かして、地元のゴルフ場に就職し、プロに信頼されるコース管理技術者を目指しつつ、大好きな故郷を次の世代に向けて守り抜いていきます。そして故郷を消滅させないためには、私たち若者が地元に残り、地元で過ごすことが住民同士の絆を深め、自然環境あふれる故郷を守っていく方法だと私は考えます。

 私にできることは限られています。しかし、今私ができることを精一杯頑張っていくことが故郷を守ることにつながると信じ、刈り払い機を脇に携え、充実した高校生活を送ります。房総丘陵と養老川に包まれた緑豊かな環境の故郷を守り、伝えるために。


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