宮城県多賀城高等学校 2年

櫻 井  千 聡
 

私達が創る「新しい東北」
 
 震災から5年が経ち、今では震災前と同じように平穏な日々を私達は送っている。だが、これは私が最も恐れる状態だ。多くの人が思う東日本大震災が「え?ああ、あの巨大地震ね、怖かったよね。」ぐらいになってしまったと私は感じるからだ。

 「このまま東北の被災地を、震災前と同じ場所に戻してはいけない。」「自分の為に、誰かの為に、地元の為に、変えていこう被災地を。」と、どれほどの人が思っているのだろうか?

 私は震災を経験した者として、被災地を新しく変えるべく被災地の中高生へ向けた1つのプログラムを作っている。その名も「PLANpic。」このプログラムは、T震災を経験した自分の未来を創造する”をテーマとし、同じ体験をした中高生と今の被災地の状況や、自分の周りを取り囲む環境の疑問などを討論し、これからの未来の為に自分達はどう行動していかなければならないかを見つけ出すプログラムになっている。

 このプログラムを作るにあたり、参加者の条件として2つのことにこだわった。

 1つ目は、被災地に住む中高生ということ。若者の柔軟で新鮮なアイデアが必要だと感じたのと、宮城の中高生同士がコミュニケーションをすることで、新しい刺激や出会いをしてもらいたいからだ。

 2つ目は東北、また日本の為に何かしたいと思っていること。自分達がこれからの日本を担う人材だと自覚し、それをつなげて自らの未来を創造してもらうことを目的とした。これは参加者のバックグラウンドの多様性が、プログラムの意義を深めるという考えのもとに行う。

 まさか自分が1つのプログラムを作り、実行に移す力があるなど知らなかったし、積極的であったことも震災が教えてくれた。このプログラムを作成していく中で、私の人生を変えた人、いつも相談に乗ってくれた人、励ましてくれた人、本当に沢山の人に出会うことが出来た。それも全部震災があったおかげだった。

 震災を経験して辛かった、大変だった、悔しかった、感じた思いは人それぞれ違う。でもその思いを心に秘めるのではなく、次に活かすように何か行動する意味を、1人でも多くの人に知ってもらいたい。また震災を忘れず前向きに捉えるという目的の活動は、震災が教えてくれたものを無駄にせず、次につながる良いモノだと思う。またこのプログラムを通し、私も高校を越えた交流や、その交流を通して自分の視野を広げることを目指している。

 震災は私達から大切なものを奪っていっただけなのだろうか?それは違うと私は考える。震災は、東北にあった輪を更に広げてくれた。だから前と同じように生きていてはいけない。どんな小さな活動でも自信を持ってでき、私の場合、原動力になったのはいつだって震災を乗り越えた皆の姿だった。私達で変えよう、そして考えよう、震災が私達にくれたものを。


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