東京都立葛飾ろう学校高等部専攻科 2年

焉@山  怜 子
 

聴覚障害者のために
 
 私は聴覚に障害があります。耳が聞こえないため言葉が上手く話せません。そんな私の夢は税理士になることです。

 税理士とは、個人や中小企業の税金に関わるサポートをする仕事です。例えば、お客様が納税について分からない事がある時、企業が支払う税金の計算が分からない時、税理士が相談を受け、代行します。

 税理士になろうと思ったきっかけは、2つあります。1つ目は簿記が好きだからです。簿記は、企業の日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにするものです。私にとって簿記の魅力は様々な業界のことを知ることができるところです。また、簿記の世界は、答えは必ず一つです。計算ミスが起こりやすくとても難しいですが、数字が合ったときの達成感はとても嬉しいです。

 もう1つのきっかけは、同じ聴覚障害の人たちのために役に立ちたいと考えたからです。私が生まれる前の社会には、聴覚障害に対する理解がほとんどないという時代がありました。運転免許を取ること、薬剤師の資格を取ることなどが許されていませんでした。その法律を変えてくれた人が私と同じ聴覚障害を持つ先輩たちでした。

 先輩たちはなぜ諦めなかったのだろうか?法律を変えた先輩の話を聞く機会があり、質問をしてみました。先輩は「聞こえないからできないと決めつけるのはおかしい、聞こえなくてもできる方法を探せばたくさんある」と言ってくれました。同じ障害を持つ先輩たちが運転免許、薬剤師の資格も聞こえなくてもできる方法を見つけたからこそ、今の私たちは恵まれていると思いました。

 そんな私は同じ聴覚障害を持つ後輩のために何か役に立ちたいと思い始めました。それが、税理士でした。税理士は国民を支える立場であり、現在、日本に約7万6千人の税理士がいます。しかし、手話ができる税理士はいるだろうか?社会の現状を見ると、聴覚障害を持つ人たちは手話通訳や筆談という様々な方法で相談してきたに違いないと思いました。しかし、税金に関する相談では、手話通訳であっても、他の人に知られたくない内容があったり、どうにも言い出せなかったりする人たちがたくさんいるのではないかと思いました。

 そこで聴覚障害者である私が税理士になれば、同じ聴覚障害を支える立場になり、気軽に相談して頂き、信頼してもらえる人間になれると思いました。そして、将来の後輩に可能性を持たせてあげたいのです。

 今後の目標は、日商簿記一級を取得し、経理事務の仕事に丁寧に取り組むことです。税理士の試験を受験するには、日商簿記一級などを取得していることが必要です。私は現在、全経簿記二級しか持っていません。経理事務に一つ一つ丁寧に取り組みながら、日商一級を目指して勉強していきたいと思います。たとえ、落ちても何度も挑戦したいと思っています。

 私の人生はまだまだ時間がたくさんあります。その時間を大切にして、同じ障害を持つ後輩のために頑張りたいと思います。


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