岡山県立岡山東商業高等学校 3年

森 本  七 海
 

手仕事で伝える本の魅力
 
 私は将来本に関わる仕事に就きたいと考えている。電子書籍ではなく、紙の本を通して人と関わりたいと思っているからだ。

 今の時代は、タブレットを持っていれば、簡単に本を読むことができる。タブレットは薄く軽量、サイズもコンパクトなものが多いため、持ち運びに便利だ。多くの作品をひとつの機械の中に収めることもできる。けれども、画面を指で操作して読むだけでは味気なく、読書の奥深さというのは伝わらないのではないだろうか。

 読書は紙の手触りや重さ、細部にわたる装丁のデザインなどをしっかり感じて、空いた時間にゆっくり読むのがよいと私は思っている。前のページにぱらぱら戻ってみるのも楽しい。それに1冊の本は、著者だけでなく、さまざまな人の手で作られ、私たちの手元に完成した形をもって届けられる。電子の文字は画面の向こうだけで終わってしまうが、本は本の世界と本自体という2つのものを作品として手にすることができるのだ。

 本に関わる仕事として、今私は図書館司書という仕事を考えている。図書館で本を整理する。利用者に貸し出す。利用者の読みたい本を検索して渡す。読んでもらいたい本を購入して紹介する。どの作業も、本を通して人と関わりを持っている。人と対面し、交流している。インターネットで本を注文する行為とは違うし、電子書籍をダウンロードする行為とも違う。図書館でしかできない本と人をつなぐ仕事に魅力を感じる。

 電子書籍が普及する時代。家の中で、街の中で、いつでもどこでも本を読むことができる。図書館に足を運び、本を借りたり、返したりするのは手間がかかる。けれども、司書と利用者が本をやりとりするのは、些細なことではあるが、手間があるゆえに大切な時間だと思う。

 岡山県には来館者数が全国一である岡山県立図書館がある。年間10 0万人を超える利用者、新刊本の7割があるといわれる購入数の多さ、検索サービスのスピード、地元の資料を大切にしていること。それらすべてが県立図書館の魅力であり、岡山の人々に愛される理由だと思う。そんな魅力的な場所に足を運ばないのはもったいない。県立図書館の蔵書の中には、利用者が欲している言葉や世界や情報があるはずだ。1人でも多くの人たちに、その豊かな世界を感じてほしい。

 私は大学に進学し、司書になるためにの勉強をしながら、多くの本に出会い、自分の世界をもっともっと広げていきたいと思っている。将来は、「この本を読んでよかった」「こんな本をずっと探していた」と本を手にした利用者に喜んでもらえるような司書になりたい。本と人とをつなぎ、本という美しい作品や読書の時間、図書館という空間を楽しんでもらえる手伝いをしたいと考えている。


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