宮城県農業高等学校 2年

岩 本  ちゆき
 

心に寄り添う〜児童福祉司という仕事〜
 
 私は将来、児童福祉司という仕事に就きたいと考えています。児童福祉司とは、専門技術を用いたカウンセリングなどの心理検査によって、ストレスや悩みを抱える子ども達の相談に乗り、悩みの原因を探ったり、よりよい解決方法へと導く仕事です。

 私は高校1年生の夏から“アスイク”という病気や災害、自殺などで親を亡くした子ども達や、親が重度後遺障害で働くことのできない家庭の子ども達の心のケアや勉強を教えるボランティア活動をしています。子ども達の悩みを聞くうちにただ聞いて理解、共感するだけではなく、具体的に解決するための方法を導き出し、少しでも子ども達の心の支えになりたいと思ったのがこの仕事に興味を持ったきっかけです。

 子ども達の悩みの具体例は、親がいないことへの悩み・不安や母親から虐待を受けているなど、その内容は多岐に渡るものでした。親子連れを見てしまった時、どうにもできないと分かっていても自分と比べてしまい、割り切ることができず辛い思いをしたり、心に傷を負いながらも親を悪く思いたくないという気持ちに苦しんでいるなど、子ども自身の力では変えようのない困難な現実と向き合っている子どもが実に沢山いました。

 そのような子ども達との会話の中で感じたことは、実際は答えがほしいということではなく、話を聞いてほしいという気持ちの方が強いということです。話しても解決しない現実に打ちのめされそうな時、話してよかったと思ってもらえる時間の共有が必要なのだと思います。相談することによって、知らなかった感情や味わったことのない気持ち、これまでとは違う発想や異なった角度からの視点など、新しい自分自身との出会いが待っています。そしてそれは、自分らしい自分になる「自分づくり」のプ口セスになると思います。

 私たちはみな親から命をもらいこの世に生まれてきます。子ども達はみな心の奥では親からもらったこの命を意味あるものにしたい、光り輝くものにしたい、という願いを持って生きています。しかし現実は、誰にも同じようにそれぞれの命を輝かせることができるような環境や条件が与えられたものではなく、ある子は悲しさや寂しい生活を言葉には出せないまま生きています。環境や条件が簡単には得られない境遇の子は少なくありません。

 児童福祉司をはじめ、福祉とは見て、聞いて、考えて、感じることだと私は思います。相手の言葉に耳を傾け、時には声にならない想いに耳を傾け、その人は今何が苦痛なのか、何をしたいのかを理解し、今自分に何ができるのかという考えに繋げ、その人の幸せについて2人で向き合い考えを深めていくことだと思います。

 私はこのアスイクというボランティアを通して、様々な子ども達に触れ、話を聞く中で、子ども達がそれぞれの命を輝かせるための応援をしたいと心から思うようになりました。また私自身も、子ども達との出会いから深い感動や生きることへの喜び、時に切なさを学ぶことができました。

 児童福祉司という職業は相手の心の課題ばかりではなく、自分自身の心についても、また人間としての心のありようの奥深さを知り、深い感動を幾度も経験することができる尊い職業だと思います。

 児童福祉司の仕事に就き、子ども達の心の支えになるためには、大学で臨床心理学を専攻し、卒業後2年以上の福祉施設での相談援助の業務経験が必要となります。私は大学で十分な知識と技術を身につけ、幅広い見方ができるよう様々な分野を勉強して視野を広げていきたいと思います。そして、温かい目を持って子どもたちの境遇を理解し、共感し、支えることができるような児童福祉司になりたいです。少しでも多くの子ども達の幸せが実現できるように。


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