白百合学園高等学校 3年

廣 江  彩 乃
 

サイバーセキュリティエンジニアになりたい
 
 私はサイバーセキュリティエンジニアになりたい。

 私がサイバーセキュリティエンジニアに興味を持ったのは、横浜にある大学のオープンキャンパスの時だ。情報系の研究室に置いてあったデモ用のパソコン画面を見て、私は目を疑った。その画面は、そのパソコン1台になされる不正アクセス、つまりサイバー攻撃の様子をリアルタイムで映し出すものだった。世界地図の上にある無数の矢印が横浜を指していた。そして画面上のアクセス数を示す数字が絶え間なく変化していく。その時私は思った。このパソコン1台でさえ、世界中からこれほどまでに狙われている。だとしたら国家の機密情報を扱う端末はどれほど狙われているのだろうと。これが目に見えないサイバー戦争というものかと衝撃を覚えた。

 サイバーセキュリティに関心を持ってからは、それに関する報道によく耳を傾けるようになった。国家機関の情報がサイバー攻撃によって盗まれているという報道が後を絶たない。そしてその原因の1つは職員の知識不足であるという。国民の生命がかかっている国家機密を扱っているところでさえ、この状態であるのは心配である。

 サイバーセキュリティは、その役割が見えにくいので軽視される傾向にある。しかし、いざバリアが破られれば、その被害は計り知れない。

 現代の私たちの暮らしは情報化社会を基盤として成り立っている。インフラなどのシステムを悪用されるのも恐ろしいことだ。ところが、監視カメラの不正操作ばかりか、原子力発電所の設備がマルウエア(悪意のあるソフトウェア)によって使用不能になるという事態も現実に起きているのだ。

 また、国家主導であらゆる手段を駆使し日本の情報を狙ってくる国もあるという。技術大国日本の売りである高度な技術を盗まれるということも頻繁に起きているそうだ。情報通信技術に頼って生きている以上、これからもますます攻撃方法の巧妙化や多様化に対応したサイバー防衛技術が重要になっていくことは間違いない。

 研究が進む情報セキュリティの分野だが、意外にも技術と同じく「人の力」が大切だという。不正アクセスのパターンなどを利用して攻撃を検出する種々のツールや技術が開発されている一方、攻撃を仕掛けてくる相手も常にその裏をかこうと次々と新たな手法を開発している。技術が進んでも、最終的には人間が「これは何かおかしい」「いつもと何か違う」と、勘を働かせて膨大なログデータの中から攻撃者の足跡を突き止めていかなくてはいけないのだ。

 それは、まるで刑事が犯罪現場に残されたわずかな遺留物などから勘を働かせて証拠となる物を見つけ、最終的には科学捜査の技術を駆使して犯人を追い詰めていく様子を思わせる。セキュリティ対策は最先端のハイテク分野のように思われているが、実はこのように「人の力」に頼る部分が大きい。それにもかかわらず、人材育成は必ずしも十分な状態とは言えないそうだ。現状を知れば知るほど、焦りのような気持が沸いてくる。

 私は早くセキュリティの技術を身に付けて、日本の大事な情報を守りたいと思う。プログラミング言語や専門用語、諸外国の言語など勉強する必要があることは想像するだけでも、山のようにある。分析能力といったものも必要であろう。自分がどの程度この分野で活躍できるかは未知数である。しかし、今の自分には、警視庁や内閣のサイバー対策室で働くことに強い憧れがある。

 我ながら、すごく格好良い夢だと思う。そのくらい高いところに上っていくために、勉強はもちろんだが、同時に日ごろから考える癖をつけ、不注意を減らしていきたいと思う。この仕事での間抜けなミスは、一気に自分の素性が相手にばれてしまうという危険をもはらんでいるからである。大変な仕事だと思うが、自分がこの分野で役に立つことを想像すると、ワクワクしてくる。サイバーセキュリティエンジニアという夢に向かって努力を続けていきたいと考えている。


[閉じる]