群馬県立利根実業高等学校 3年

原 沢  藍 子
 

女性の力で日本の農業を変える
 
 里山のピクニック、マス釣り、隣の川ではサンショウウオが泳ぐ水田での田植え、おきりこみやすいとんの農家レストラン、バーベキュー。これは私の家が経営する農園での遊び体験です。

 私の家は群馬県最北部のみなかみ町で、リンゴ園を中心とした体験農園を経営しています。この農業体験を中心的に運営するのは農林水産省が推進している「農業女子プロジェクト」のメンバーとして活躍している、私の母です。

 農業女子プロジェクトとは「女性の力で農業を変える」をキーワードとして活躍する若手女性農業者の組織です。

 現在、日本の農業は危機的な状況にあると言われています。後継者の不足、耕作放棄地の増大、農村人口の減少による地域社会の崩壊、景気の低迷による消費者の低価格志向、輸入の拡大による食料自給率の低下。どれも大きな社会問題で、その解決の糸口さえ見えていない状態です。

 TPPはアメリカの離脱により、先行きは不透明になりましたが、トランプ政権は日本に対してさらに厳しい自由化要求を突きつけてくるのは間違いないと言われています。

 アメリカの品種の主流は日本と同じ「ふじ」です。世界生産2位のアメリカが日本へのリンゴ輸出に本腰を入れれば、日本のリンゴ農家に与える影響は計りしれません。

 では、日本は対抗する力を全く持たないのでしょうか。その解決の大きな力になると言われているのが、女性の活躍です。

 私の家で販売しているのは農産物だけではありません。おもてなしの心こそが、私の家の販売の要になるのだと母はいいます。おもてなしの心は決して輸入できません。

 リンゴやお米を注文してくださるお客さまも、私の家の農場を訪れてくれたリピーターであり、心を込めて栽培したその心遣いを買ってくださるのです。

 母は日曜日には、農業女子プロジェクトの活動で各地に出かけ、ドライリンゴやジャム、漬け物などを販売するとともに、各地の農業女子プロジェクトのメンバーと交流をして研鑽を積んでいます。私も母と共に販売会に参加する中で交流をさせて頂いています。

 その中で出会った、星野美樹さんは利根郡昭和村に嫁いでからはご主人と共に農業生産法人を運営し、商社の広報職のキャリアを活かし、花火大会を冬に開催する活動をとおして地域の活性化に大きく貢献しています。未来を語る、前向きできらきらした瞳には思わず引き込まれてしまいました。

 また、母は農場で作業をするときにはおしゃれな服を着て、それをブログにアップしています。農業の悪いイメージを払拭して、農業自体の価値観を高めたいのだと言います。

 そんな母を憧れの眼で見て来た私は自然と農業が好きになり、農業が学べる利根実業高校に入学しました。そして、現在は弓道部とそば打ちの活動に熱中しています。

 弓道は他の部活動とは異なり力や瞬発力ではなく、集中力が勝負です。そば打ちにおいても最も大切なのは集中力です。そばは非常にデリケートなので、常に最大限の心遣いがなければいいそばはできないのです。このこまやかな心遣いは私が母のように農業女子となってからも、必ず役立つものであると確信しています。

 私は昨年、そば打ち大会の初段の部で最優秀選手賞を受賞しました。今年は全国高校生そば打ち選手権大会に出場します。そして、本校の全国優勝3連覇に是非とも貢献したいと練習を重ねています。

 私は高校卒業後、群馬県立農林大学校で農業の6次産業化について学び、家の農園を継いで母を越える農業女子になります。その時にはこのそば打ちもプログラムに是非加えたいと考えています。

 農業は男の仕事であり、女性はその補助的な役割を果たすものだとずっと言われ続けてきました。しかし、女性には日本の農業を変えていく大きな力があると私は考えています。

 農業は決して衰退産業ではありません。私と私の農園にはどんな未来が待っているのでしょうか。私の挑戦は始まります。


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