国際理容美容専門学校高等課程 3年

山 本  紗 良
 

私の夢を叶える仕事への架け橋
 
 自分を表現する場が欲しい。私はハーフなので見た目は比較的目立つが、性格は地味で大人しいタイプだ。けれど外出中に常に感じる他人の視線や、自分が思っている以上に自分の顔やスタイルを誉めてくれる人がいたので、自分の魅力に気づいた。そうか、見た目で自分が表現できるのではないか、そんな事を考えていた中学校3年生の時、その出会いは訪れた。

 街中でモデルになってくれないかと突然誘われたのだ。その人はファッションデザインの勉強をする専門学校生で、就職用の資料に自己作品を着て写真を撮らせてくれるモデルを探しているのだという。私は即座に承諾した。これで何かが開けていく……。そういう期待感と共に……。

 撮影の日、その人のデザインした洋服の世界を初めて見て驚いた。アフリカの自然・動植物のイメージとエレガントなドレスを合体させたような、とても個性的なものだったからだ。だからその人は、黒人のモデルを使いたかったのだと言ったが、私はパッと見て、これは着こなせないと思った。その服は私が普段着ているカジュアルな服とは全然違っていたからだ。ところがその人が連れて来たヘアメイクさんは、私のくせ毛混じりの縮毛矯正した髪の毛を、鳥の巣に見立ててヘアアレンジをしてくれた。木の枝を使ったヘアアレンジと、メイクをしてもらうと不思議なことに服の世界にふさわしい私になれたのだ。この瞬間の感動はきっと一生忘れられない。

 実はこの鳥の巣ヘアは、ヘアメイクさんがコンテストで賞を取った素晴らしい作品だったのだ。私は中学1年生の時、長年の悩みであったくせ毛を縮毛矯正という美容技術で解消して、生まれ変われた感じがしたのを覚えている。この日のヘアメイクで積極的になりたい自分がいることを知り、目から鱗が落ちたのだ。日常の私とかけ離れた作品の世界でモデルができたことは、素晴らしい体験だった。ハーフを生かしたモデルの体験で美容施術をする人とされる人、両方が生かせる仕事がしたいと、ぼんやり夢を見るようになった。

 高校2年生の時、私はネットを通じ、ある芸能ブロダクションのプロデューサーと知り合いになった。その人から夢を実現できる人とはどんな人なのか教えてもらった。それは今の社会情勢と夢の内容が無理なく合致して実現可能であり、楽しく努力できる人だという。私達ネット世代の若い子は、情報過多のため、芸能人になりたいと思った時点で頂点に立つ人を目標とし、挫折してしまう。だから気をつけなくてはいけないとも忠告してくれた。この言葉は、私の心に深く刻まれた。

 私は今高校3年生で就職活動をしている。サロン説明会でも全く同様の話を聞き驚いている。サロンで欲しい人材とは成績優秀者ではない。そのサロンに入りたいと思った熱意を第一に重視しているのだと言う。なるほど、熱意があれば当初の基本のアシスタントワークでも充分自己を表現する夢の実現の場であるはずだ。そうやって常に今の自分から始め日々の仕事に熱意を持ち楽しく次のステップを目指せばいいのだ。

 では私が入店したいサロンとはどのようなサロンだろうか。働く私の姿がお客様のなりたいイメージに近いサロンだ。まさにモデルの様な感じでお客様の目標になれるよう日々自分のセンスや施術の腕も磨けるサロンだと楽しいのではないか。そして私が縮毛矯正で長年の髪の悩みから救われた様にお客様と共になりたいイメージに近づけたい。

 熱意を持って日々の仕事をこなせば次のステップも見えてくる。夢の仕事への架け橋だ。そう可能性を信じて。


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