沖縄県立宮古高等学校 2年

前 里  和 香
 

「命と水」私のしごと選択
 
 私は、普段何不自由なく水を贅沢に使える生活環境の中にいます。それが当たり前で、「水」に感謝することを忘れてしまいます。

 しかし、台風や地震・津波など自然災害時に人の命を救うのは「水」です。また、地球温暖化が主な要因と考えられる集中豪雨により、尊い人命が失われる悲惨な状況の中、私達はいかに水と共生し、うまくつきあうことが出来るか問われています。

 私は、東日本大震災から一年が過ぎようとしていた小学6年生の夏休みに、宮城県南三陸町に行く機会がありました。そこでは、テレビで見る悲惨な状況を直接肌で感じると共に水の大切さを痛感しました。

 地域の方の話によると、当時は地震と津波の影響で水道が使えませんでした。その時、被災した人々の命を救ったのは、昔大切に使っていた井戸の水でした。それを、皆で協力しながら汲み、助け分け合うことで生きることができたそうです。この被災地での体験は、「水」というのは最も人間にとって必要なものであり、人の命を救う一番身近なものだからこそ、無くなると生きていけないものなのだと考えさせられました。被災地訪問から5年が過ぎ、私は現在高校2年生となり、改めて「人の生と死」「一日一生」という言葉の重みを考えながら、自分の将来の進路について考えています。

 災害時における「水」の大切さが理解できた一方で、私の住む沖縄県宮古島の水はどうなっているのだろうかという疑問が浮かんできました。そこで、宮古島の地下水保全に関する環境学習に参加しました。宮古島には、大きな山や川がありません。雨水の多くが、地下水となります。その理由は、宮古島はサンゴが風化した琉球石灰岩で形成されており、地上に水が溜まりにくい地質であるからです。

 その地下水の量は、年間雨量の約40%、約1・4億トンの雨水が最終的に地下水となります。この想像も出来ない大量の大切な地下水の上で、私たちの生活は営まれています。

 宮古島は、周囲をサンゴ礁にかこまれた美しい場所ですが、飲み水の全てを地下水に依存しなければならない小さな島です。そのため、地下水は限りある水資源であり地下水汚染は、私たち島民にとって生命が危険にさらされるという命の問題です。仮に地下水が汚染された場合、飲み水として再び使えるようになるまでに約千年以上もの長い年月がかかることに驚きました。

 ところで、地下水は川や湖とは異なり目に見えません。そのため、地下水を保全し守ることはとても大変であることを、この学習会で学びました。世界では、世界人口の約3分の1が地下水に依存した生活をしている中、地下水が汚染され多くの幼い命が失われるなど人命が危機にさらされています。

 今は、水道の蛇口をひねればいつでもどこでも安全な水が得られます。しかし、人間の行動によっては人の命さえも容易に奪ってしまう凶器となってしまいます。現代に生きる私たちは、安全な水を簡単に手に入れられるありがたさと、自然への畏敬の念を持ち、昔の人々の水を得る苦労を考え、大切な水を守り次の世代へ引き継ぐことが大事なのではないかと思います。

 私は、東日本大震災の被災地である南三陸町の地に立つことで、自然災害の恐ろしさを肌で感じ、「命の尊さ」を心に刻みました。

 私は、将来人の生命や健康を守り支援できる職業として医学の道を志し、地域社会に貢献できる人材になれるよう、謙虚な気持ちで一生懸命地道な努力をしたいと考えています。


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