成城学園高等学校 3年

山 崎  永 麗 南
 

日本を世界一に
 
 私は将来、国民みんなが心肺蘇生を行うことができるように、心肺蘇生法を普及させたいと考えている。そのために、命の尊さを伝え続ける高校の教員になりたい。そして学校を拠点として、心肺蘇生講習会を日常的に開き、生徒や教員、保護者といった学校関係者のみならず、地域の一般人や近隣校の関係者にも普及する活動を行っていきたい。

 私がこのような夢を持ったのは、高校でのライフセービング部の活動に大きく起因する。全国の高校に3校しかないこの部活を知った当初、水泳を含む運動全般が苦手な私は全く魅力を感じなかった。しかし、部活を紹介するチラシにあった「愛する人の命を守ることが出来ますか?」という問いかけがなぜか気になり、その言葉を通り過ぎては、後ろ髪を引かれて何度もその意味を考えているうちに、「そうだ。私は人の役に立ちたいのだ。」と気づき、親の反対を押し切って入部を決断した。それ以来、今日まで日々きつい練習に励んでいる。この部活が他の運動部と大きく違う所は、競技が全てではないことだ。それを私達ライフセーバーは「ゴールの先に助ける命がある」と言い、人の命を助けるためにきつい練習に果敢に挑んでいるのだ。もちろん入部当初は練習の厳しさに、「もうやめたい」という弱音ばかりが頭を巡る毎日であったが、今ではとても誇りをもって好きだといえる部活である。こう思えるようになったのは、顧問の先生が年に30回ほど開いている心肺蘇生講習会の手伝いを行うようになってからだ。私達部員は、高校1年生の夏前に心肺停止した人へのアプローチ法を学び、「ベーシックライフサポート」という資格を取得する。そして顧問の先生と共に講習会で、地域住民の方や、小学生に対して心肺蘇生法を普及する活動を行う。また、私たちの高校では、高校2年生の保健体育で、生徒全員が心肺蘇生法を学ぶ。そこでも私達部員が授業をリードする。私はこれらの活動を行っているうちに、世の中にどの程度、貢献出来ているのかが気になり、調べてみることにした。

 その結果、心肺停止者を発見した人のうち、正確な対処が行えた人は約10%だったことが分かった。また、現在の日本人は年間4万人が突然死しており、これは一日に約100人という計算になる。他にも大きな問題がある。現在、救急車は要請してから現場到着まで平均7分もかかる。心停止後2分以内に蘇生を行った場合の救命率は75%だが、5分後には25%までも低下してしまう。つまり、心停止者の未来はその場に居合わせた人次第であるといっても過言ではない。

 また、心停止を起こしている時に電気ショックを与えて蘇生を試みるAEDにも、判断ミスをする場合があるという問題も知った。AEDがおこす判断ミスは、心停止した人の6割に見られる「あえぎ呼吸」を正常の呼吸と判断してしまうことだ。本来この呼吸は、「すぐに処置を行え」というサインであるが見過ごされるケースが後を絶たない。判断ミスがあっては、助けられるはずの命が助けられない。これらの事実に私は自分が行っている活動は、自己満足だったのではないかと、自己嫌悪すら感じてしまったのと同時に、たとえ近い将来AIが広く普及する時代がきたとしても、私たち一人ひとりが適切な判断力と心肺蘇生法を養わなければならず、そのために私は諦めずに普及活動することを強く心に決めた。

 この夢を叶えるために私は今まで同様、多くの場で心肺蘇生の大切さを伝える活動を続けたいと考えている。そして、ライフセービングの先進国であるオーストラリアで心肺停止者へのアプローチ方法を直に学びたいと考えている。また、高校3年生の春に取得した小学生以下に対してライフセービングを教える資格に続き、中学生以上に教育する資格の取得もしたいと考えている。そして高校の教員となり、日本を心肺停止者の救命率世界一にしたい。支え合う精神が世界一根付いた国にしたいと考えている。


[閉じる]