岡山県立岡山東商業高等学校 2年

柴 田  ひ よ か
 

誇るべき伝統、伝える笑顔。
 
 「一緒の演舞場だからきっと楽しいよ。」友達のお母さんが言ったその言葉がきっかけで、私はうらじゃ祭りの「裏方」を1年だけすることに決めた。はじめ、声をかけられた時は「友達と普通に行くほうが楽しいでしょ…。」と決めつけていた。もちろん乗り気なわけも無く、軽く流していた。付き合いで始めた裏方が、私の「今したいこと」につながっていくとその時は1ミリも思っていなかった。

 「少し朝早く来て美容室でかわいくしてあげるから!」「じゃあ、明日Tシャツ取りに来てね。」と強引につれてこられた駅前の演舞場。周りを見ても知らない大人ばかり、見たこともない芸人、いつ、何からするべきなのか一つも分からない私にとっては不安と緊張、憂鬱な場所でしかない。はやく終わればいいのにと私は何とも言えない顔をしていたのだろうか。司会をする芸人さんが話しかけてくれた。

 「初めてなんだって?暑いだろう!一緒に盛り上げていこう!」

 その言葉で何故か「ふふふっ」と笑みがこぼれ、憂鬱が少しだけ解けたような気がした。裏方の仕事はたくさんあった。演舞場でおどる数々の「連」との打ち合わせ、順番を決める抽選。特に駅前は多くの人が見に来ることが理由でバーゲンのように連の代表が我よ我よと抽選の割りばしに手を伸ばす。それぞれが歓声を上げたり、もうしわけ無い顔で仲間の待つ場所へ向かったり様々だ。

 しかしそこからが大変で、割りばしには数字が書いてあるのだが、それはそこでおどる順番にあたる。ほかの演舞場で先に登録し、その順番が引いた数字と近い場合、移動時間や休憩の時間を考えると、ここへ来ておどることは不可能に近くなる。よって、いい数字がでてもキャンセルする連は数多くいるのだ。忙しく受付をしている裏方も、「うらじゃって戦いみたいだ」と強く思った。裏でこんなに必死に順番や場所を決めているとは夢にも思わなかった。

 9時ごろになると、1番目におどる連が準備を始める。裏方は警備をしたり、おどる場所へ誘導するため入口と出口に立っている。おどりが終われば1連に2人、輝いていた「彩鬼(いろどりおに)」に木札をかけるのだ。みんな炎天下のなか、体をいっぱいに動かし、こぼれおちそうな笑顔でおどっている。それを見ているだけでとても笑顔になれる。心の中から「幸せの瞬間」を分けてもらった。一生懸命に、そして自分自身が「本気で楽しくおどる」ことは、人を笑顔にできると知った。裏方のやりがいとおどる人達の笑顔に魅力を感じ、翌年も「裏方」としてうらじゃへ参加した。

 私は「昨年は見ていただけの受付をしてみたい」とお願いをした。「やってごらん」と言ってもらい、教えてもらいながら受付をした。そこでも発見があった。順番の確認ができ、おどることが確定した連の人達が報告のために受付へくる。

 「〇番でおねがいします〇〇連です!」

 その顔はすでに満面の笑みで輝いている。やっぱりこれは最高だ。昨年見て、なれてきた私には他の発見もたくさんあった。上手く流れが進むようJCの方達が事前に集まることも知った。芸人の盛り上げかたも凄いと思った。私は、うらじゃが好きだ。これに携わりたい。岡山が好きだ。と思った。

 私は今、経済学に興味がある。地域のイベントや行事を人と人との協力で作りあげていく素晴らしさを知り、自分もそのようなことがしたいと強く思っている。笑顔が笑顔をつくる。とても単純なことだが一番大切なことだ。こんな経験ができたのもすべてが「人と人との繋がり」ご縁があってのことだ。誘ってくれた友達のお母さん、自分を変えてくれたすべての人達に感謝したい。私は今年も4回目の「裏方」をしたいと思っている。


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