沖縄県立名護高等学校 3年

玉 城  明 依
 

地元愛サイクル創生
 
 「大好きな地元のために、役立つ仕事がしたい、地元が抱える課題解決に携わりたい。」私には、地元への強い愛と大きな夢があります。私の将来の夢は、地域医療に貢献する医師になることです。

 私の住む沖縄県北部地域は、慢性的な医師不足が続いており、患者が安心して治療に専念することができないという深刻な状況に陥っています。県立北部病院では、医師不足に伴って産婦人科や外科など一部の診療科で休診や診察日数の削減に追い込まれています。その結果、患者は車で1時間以上もかかる病院へ通わなければいけないという事態に直面するのです。

 私の母も、弟を出産する直前に卵管がねじれてしまった際、近くの北部病院ではなく中部の病院に紹介状が出されました。私は、北部に住んでいながら、北部に医師が足りていないことや、自分が住んでいる場所が、医療の面から言わせてみれば「過疎地」だということに、しばらく気付きませんでした。身近な人の体験を通して初めて実感がわき、医師がいないことに対して危機感を持ちました。

 幼い頃から「かっこよさそうだから」という理由で医師になることへの憧れがありました。それに加えて新たに、病院はあるけれど医師がいないから北部で対応できないという地域の問題を解決するべく、改めて私は医師になるぞと決意しました。

 数ある診療科のなかでも、私が興味を抱きこれからの北部に最重要だと考えているのは、産婦人科です。北部地域で産婦人科がある病院は合計で3か所。このうち1つは県立北部病院で、現在は休診状態です。さらに、あと2つの個人病院も、医師の高齢化に伴って病院を閉めるのではないかといわれています。

 このまま、北部の産婦人科がすべて無くなってしまえば、北部に住む女性は皆遠くにある病院へ通い、出産しなければなりません。妊婦にとって、1時間以上の車での通院は心身ともに疲労が伴います。家の近くで出産できる病院がないということから、いつ生まれてくるのだろうか、いつ病院に行けば出産に間に合うのか、などの不安に襲われることも十分にあり得ます。このような負担を考えると、地元で子どもを産み育てることのできる環境づくりのためにも、北部地域において、産婦人科医の需要は高いはずです。

 出産だけではなく、女性の体の診察ができるのも産婦人科医です。近年、女性の社会進出が活発化しており、女性特有のホルモンバランスに注目して診察をすることで、仕事をする女性を支えたいです。心の不調やストレスを軽くすることができたら、地域を明るく活性化することにつながっていくと考えます。

 産婦人科の他にも、北部には重要な医療があります。それは、ドクターヘリ医療です。北部地域には緑に囲まれた「やんばる」と呼ばれる地域と、いくつかの離島が含まれます。救急車を要請したいが、一刻を争う場合などに、ドクターヘリが病人やけが人を救出に向かうので、北部地域にとっては欠かせません。ドクターヘリを運営するための資金が、出動要請に伴う運営費に追いつかず、出動できなくなることが度々あります。離島まで往復するだけで燃料代が数万円、それが重なるとあっという間に資金の底が見えてしまうというのです。ドクターヘリに加えて充実した遠隔医療が重要だと考えます。各集落の診療所で、ある程度の手当てができるようになれば、ドクターヘリの負担が減るはずです。

 生まれ育った地域のために、私は常に何が求められているのかを考えて行動したいです。地元の人が故郷に戻って地域医療をつくりあげる、という流れができれば今のような医師不足は解消されると思います。私はその流れをつくる一員となって地元に貢献したいのです。


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