高知県立高知農業高等学校 2年

横 田  銀 大
 

これからの林業の発展のために
 
 高知農業高校森林総合科に入学して、森林科学などの専門教科を学ぶことで、私の考えは大きく変わりました。私が目にする高知の自然は、そこにあるもの、単なる風景の一部から、役割を持つ大切なもの、守らなければそこにあり続けることはないものに変わったのです。

 私は将来、建築に関わる仕事がしたいと考えていました。それならまず、材料である木について学ぼうと入学を決めたのですが、実習などを通して、森林の役割の大切さがわかってきました。

 森林の「水源かん養機能」は、雨水を地中に浸透させる能力があります。これは雨水を充分土壌中に蓄え、ゆっくり河川に流すことができ、洪水や渇水の緩和、水質浄化の役割のことです。

 土壌保全・土砂災害防止機能も私たちの生活にとって大切です。地中にはりめぐらされた樹木の根は、土壌を斜面につなぎ止め土壌の流出や土砂災害の未然防止に力を発揮します。しかし、この役割を持つ森林は当たり前に存在するものではありません。

 演習林実習に行き、木の伐採や枝切り、植林の大切さを体感する中で、その大切さは、私たちが守らなければならないことにも気づきます。木を伐採した山に林業作業者が苗を手作業で一本一本山肌に植えます。そして、何十年もの時間を経て、見慣れた山へと戻っていくのです。今、見えている当たり前の風景は林業に関わる先人の遺産なのです。実習を行う中で、林業に携わる人の話を聞き、私は林業の大変さや苦労を知りました。と同時に、未来も必要な仕事だということも。

 現在、木材建築が見直されつつあります。高知県には、「和の大家」とも称される隈研吾氏の建築物がたくさんあります。隈氏は2020年東京オリンピックの新国立競技場の設計担当です。高知県では梼原町に数多くの建築物があり、昨年私は、現地に隈氏の建築物を見に行きました。雲の上のギャラリーです。それは木を編む技法がなされています。前方から注ぐ陽の光が幻想的で、その幻想の世界に吸い込まれそうになります。今まで何気なく見ていた木がアレンジによって大きく変わることに驚きました。考え方を変えることで木はまだまだ進歩するのです。そして、新しい考え方やアイデア、発想は木のことを知ることによって大きく広がるのだと実感します。

 隈氏のような建築家になりたいと強く思います。木のことを知る建築家になりたい、森林や自然を守れる建築家になりたい…。思いは大きくなります。

 そんな時、木を使った新しい技法、CLTを知りました。CLTは、今まで利用することのなかった廃材に手を加えた木の構造です。コンクリートにも匹敵する強度を持ち、断熱や耐火にも優れた材となります。森林は保全のために適度に伐採する必要があります。大きくない木や枝が対象です。今まではその伐採されたものに利用価値はありませんでした。しかし、CLTを取り入れれば、材としての価値も生まれるのです。それでもコスト面や耐水に問題があります。

 改良すべき点はたくさんありますが、森林を守る材を考えていくのも建築家の仕事であるべきだと思います。林業を身近に、木造建築の良さを感じてもらうことから始め、私自身も将来、CLT以上の材を開発できるようになりたいと思うのです。

 建築と林業は切っても切れない仲です。材としての木を見るだけではなく、そのもとの木、森林にまで思いを持ち、建築物に取り組むのが本当の建築家だと思います。多くの人に木の良さを知ってもらう役目も担うことになります。豊かな自然、豊かな森林を育むことができるよう、私は学び続けます。

 私の理想とする職業人になるために。


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