群馬県立伊勢崎興陽高等学校 3年

神 立  愛 里 子
 

音楽と福祉
 
 音楽で人を元気づけられるって素敵だな。私は小さい頃から音楽が好きで、人前で歌を歌ったり、踊ったり、ピアノを習ったりと、音楽に触れてきました。夢は歌手になること。小さい頃はずっとそう思っていました。そんな私が、福祉にも関心を持ち始めたきっかけは母の何気ない一言です。「音楽療法士って知ってる。」と、私に尋ねました。中学生だった私に母はその仕事について簡単に説明してくれました。すぐに興味を持ったのを今でも覚えています。内心、歌手になる夢を諦めていたからかもしれません。

 興味を持った私は行動に移しました。母の知り合いに音楽療法士の仕事をしている人がいたので、様子を見学させていただきました。その日は、障がい児の男の子のセッションの日でした。発声練習で歌を歌ったり、歌に合わせて楽器を鳴らしたり、身体を動かしたりする訓練でしたが、最初はなかなか参加してくれず、無表情で緊張している様でした。しかし、徐々に慣れてきたのか、緊張がほぐれ、笑顔が増えていくのが見ていてはっきり分かりました。発声も最初よりも声が出ていたり、自分から話すようになり、すごいと思いました。1時間で男の子のセッションは終わりました。男の子のお母さんが迎えに来て帰る時、セッションがよっぽど楽しかったのか、帰りたくないと大泣きしてしまいました。この一日の出来事を通して、音楽の持つ力を間近で見ることができました。

 そのことがあって、私は福祉にも興味を持つようになりました。そのため、「福祉と人間を学ぶ系列」がある、群馬県立伊勢崎興陽高等学校を志望し、入学しました。私は、介護コースを選びました。2年生から実習が始まり、特別養護老人ホームで実習をさせていただいています。高齢者と関わる機会は、一緒に住んでいる祖父母ぐらいですので、とても新鮮でした。実習先では、職員さんと同じように、利用者さんに接します。初めのころは、何をしていいのか分からず、ほとんどの時間をコミュニケーションを取るだけで終わりにしてしまったこともありました。普段の話し方で話しても、利用者さんの耳には届かず、話が続かなかったことが何回もありました。ある日、利用者さんが一枚の紙を持っていました。見せていただくとそこには、「ふるさと」の歌詞が書いてありました。話を聞くと、月に一回来て下さる音楽療法士の方が渡してくれたらしいです。私は、その歌詞カードを見ながら「ふるさと」を歌いました。あまり大きな声で歌ってはいないのですが、私に合わせて、近くにいた方が一緒に歌ってくださいました。歌い終わると、「やっぱり歌うのは楽しいね。」「心が穏やかになるね。」など、おっしゃっていました。音楽は、人の心と心を結ぶ大切なコミュニケーションだと私は思いました。

 音楽の感じ方は人それぞれです。価値観、生活歴、そのときの心情などで捉え方は変わってくると思います。音楽の力はすごいです。

 音楽の持つ力を最大限活用し、私は福祉と音楽を組み合わせた仕事に就きたいと考えています。大好きな音楽で、高齢者や障がいを持っている人、子ども、健常者、全ての人を対象とし、少しでも生活の質の向上や身体機能の維持、社会復帰、またはその人にとって生きがいとなるような仕事をしたいです。

 音楽の力で福祉の世界に新しい風を。


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