明星高等学校 1年

筒 井  ゆ り 乃
 

憧れの人示してくれた夢
 
 「環境に関わる仕事に就きたい!」そう思い始めたのは小学生の頃だ。「えっ?」と、よく言われたが、私がそう思うようになった理由は、憧れの存在がいたからだ。

 「食べ残すことは、環境問題に一番影響してしまうんだよ。」亡き祖父が昔、母に言った言葉だ。普段はとても優しいが、会社を経営し、仕事には厳しい祖父だったらしい。革の匂いがする、ピカピカの大きな車で、私をいろいろな場所へ連れていってくれた。「私がじじを継ぎたい!」そう言うと、祖父は「そうかそうか。」と大きな口を開けて笑った。私は祖父が大好きだった。

 そんな祖父は私が12歳の時に死んでしまう。たくさんの人が頭を下げる真ん中を、私が乗る黒い車が走った。これまでの思い出が涙とともに溢れてくると同時に、誇らしい気持ちが入り混じる。「私もいつか祖父のように、多くの人から信頼される人になりたい。」

 その一年後、私が小学校の卒業文集に書いた将来の夢は、祖父の仕事であった「環境分析」だった。

 中学生になり、私はたくさんの経験をする。地球のステージと呼ばれる授業などを通して、この世界に今も苦しむたくさんの子供達がいることを知った。私と同じくらいの年、もしくは私より小さい子供が、ゴミの山からお金になるものを見つけ、それを売って、必死に生きている。学校にも行けず環境の悪い場所で、治せるはずの病気で亡くなっていく子供達。私は胸が痛くなった。またその事実を知ったのにも関わらず、今の自分には何もできないことが悔しかった。毎年部活動で参加するユニセフ募金活動では、せめてこの声が何も知らない方々に、そしてその子供たちに届くようにと必死に声を上げた。私達の前をたくさんの人が素通りする中で、お金を入れて「頑張ってね」と声をかけてくださる方々の温かさは、本当に力になった。そして、その温かさが子供達に届いて欲しいと、強く思った。私はこれらの経験を通して、夢への気持ちは一層高まっていった。

 祖父の会社は今、叔父が経営している。その叔父に話を聞く機会があった。話の中で、一番大切だと感じたのは「現場に立つ」ということだった。今の時代、検索すれば何でも画面に出てくる。とても便利だ。だが、実際に目の前にあるかのような表面の世界にとらわれているだけだ、という言い方もできてしまう。もし嘘の情報が真実かのように書かれていたら?小さな出来事も、過剰に書かれていたら?今の私達は、そのまま受け入れて信じてしまうのではないだろうか。私達はもっと多角的な視点を持たなければならない。少し前に問題になった、恵方巻きの大量廃棄。たしかにあれは、大きな問題である。だが、恵方巻きの大量廃棄は、たまたま大々的に扱われ、多くの人が知ることになったと考えると食料に関して日本人が知るべきもっと多くの問題があるはずだ。日本ではまだ食べられるにも関わらず捨てられていく食糧が一年間に約640万トンある。それは世界中で飢えに苦しむ人々に向けて援助する食糧約400万トンの1.6倍だ。その約640万トンの食糧で、どれだけ多くの人が飢餓から救われるだろうか。「現場に立つことが大切なんだ」と叔父が言った理由は、現場にしか答えがないからだ。疑問を持ったり、その先にある答えを求めずに、表面だけの世界を正確だと思い込んではいけないと思う。高校生となった今、15歳の私は3年後、選挙権を得る。一歩一歩、大人に近づいていく中で、検索ではなくその奥にあるもの。固定概念にとらわれない勇気を持ち続けたい。

 多くのある選択肢の中で、もし私の夢が叶ったとしたら、自分の目で見る真実を大切にし、一人でも多くの人を救っていくことに全力を尽くす。また人に信頼され、人のために仕事ができる人、そして自分に誇りの持てる人になれるよう、今を一生懸命生きたい。


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