千葉学園高等学校 3年

木 田  実 優
 

笑顔あふれる街へ
 
 「私にできることはなんだろう。」

 高校生活も折り返し、将来を考えるべく自分と向き合いながら歩いたある日の帰り道。私は悩んでいた。

 1年生のときから管理栄養士になるのだという目標はあった。しかしそれは、今よりも専門的なことを勉強したいという探求心だった。資格を活かしてどのように仕事をして社会に貢献したいかなどとは考えていなかった。

 私の抱いていた目標は明確に見えるようで漠然としたものだったのだ。

 ならば、私は将来管理栄養士としてどのように働きたいのだろう。誰の役に立ちたいのだろう。ぐるぐると考えているうちに家に着いた。

 夜ご飯を食べて、テレビをみていると私にとって衝撃的なことが報じられていた。それは、「都道府県別平均寿命青森県がワースト一位」私が今住んでいるこの青森県が、日本一の短命県だとテレビは言う。

 これほど嬉しくない一番は初めてだった。

 さらに衝撃を受けたのはその原因である。その原因とは、生活習慣病患者が多いことだ。生活習慣病を引き起こす要因は、その名の通り生活習慣が悪いことにあり、例として長期にわたる喫煙や飲酒、偏った食生活があげられるが、一番の要因はやはり偏った食事生活である。

 青森県は、冬場の寒さが厳しく、作物も十分に収穫できなくなるため昔から漬物をよく食べる傾向にあった。その昔からの習慣が受け継がれこの不名誉な一番を招いたのだろう。

 「土地柄、そのようになってしまうのは仕方がない。」「短命だからどうした。」と、思う人もいるだろう。

 しかし、少し立ち止まって考えて欲しい。

 悪い生活習慣を重ね短命になることで、青森県は一人ひとりそれぞれの大切な家族や友人と過ごせたはずの未来、笑顔を自らの手で奪っているのだと。何年も住み続けて、愛着のある青森県の人の笑顔や希望に満ちた未来が消えてしまうことはとても悲しい。

 しかし、時代が変わり、食べ物の流通が良くなった今、青森の食事は変えられる。

 ならば、私が青森を変えよう。 

 青森の人のために青森を健康で笑顔のあふれる街にする管理栄養士として働く。そう決心した。その日の夜、漠然としていた私の目標が鮮明になった。

 管理栄養士になり、青森を健康で笑顔にするために成し遂げたい夢がある。それは、青森県の管理栄養士を集めて団体をつくり、各地をまわり栄養指導をする青森食育行脚をすることだ。

 食習慣というものは毎日の食事の積み重ねでつくられる。ならば、未来の青森を担う大切な子供達に食に興味を持っていただき、良い食習慣を身につけてもらうことが短命県返上への一歩と考える。

 この考えに至ったのは調理の勉強をしている今、ボランティアで食育の現場に携わった時、子供達の好奇心に満ち溢れた眼差しが後押ししてくれたからだ。

 もちろん未来の青森食育行脚チームは、子供だけを対象としない。青森県民全員が健康で笑顔に過ごせるようにするには、大人やお年寄りの方にもわかりやすく、納得していただける食育をする必要があると考えている。

 今、北国の一人の女子高生が使命感に燃えている。夢を叶えるために勉学に励み、様々な経験を活かし健康で笑顔のあふれる青森を創りたい。

 真剣に考え、たどりついたこの夢は何年かけてでも実現させたい。すべては、大好きな青森県のために。

 「短命県返上、目指すは日本一の長寿県へ。」


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