山口県立熊毛南高等学校 3年

末 岡  奈 帆
 

患者さんの最高に楽しいひとときを
病院食で実現するために

 
 「煮魚が食べたい。この食事は食べている気がしない。」

 この言葉で私は病院食について関心を持つようになった。調べていくうちに、食事を誰もが楽しみにする仕事を見つけた。そして、その仕事に就ける私の将来が楽しみになった。

 文頭の言葉は、病院に入院しているある男性の言葉だ。この言葉を知ったのは、高校2年生の学校で行われた栄養学についての講座を聞いた時だ。男性は病気のため、固形物を食べることが難しく、流動食を病院食として提供されていた。そこで男性は文頭の言葉を口にした。しかし、男性の病気は固形物を食べると、食べたものを喉に詰めて吐いてしまうため、病院側としては、固形物の病院食を提供することはできなかった。

 この話を聞いて私は、どうすれば男性が満足できるような食事を提供できるのだろうかと考えるようになった。病院側が固形物の病院食を提供できなかったことは仕方のないことだと思う。しかし、今までの人生で毎日毎日欠かさずに続けてきた食事という行為に制限をかけ、楽しみや好きなものを食べるときの幸福感、生きがいともいえるであろう行為を男性から奪ってしまってもいいのか。

 私はこの問題を考えているうちに病院食の未来の可能性に希望を感じた。それと同時に男性のような患者さんに最善の選択を提供し、患者さんにとって病院食が最高に楽しいひとときになるようにしたい、病院食を治療に専念する患者さんの糧にしたいと考えるようになった。そして、私は病院の管理栄養士を目指すようになった。

 この思いを叶えるための具体的な提案が私にはある。病院に入院している患者さんは、つらい治療ばかりの日々で疲労や病気に対する不安、ストレスなど、治療以外の要素や入院することでのいろいろな問題を抱えている人は少なくないと思う。このような患者さんを食事の面からサポートすることも病院の管理栄養士の仕事だ。患者さんにとって病院食を最高に楽しいひとときにしたいと私は思う。

 そのために、食事の時だけでも病気のことなどから離れ、いつものようにベッドの上で一人で食事をするのではなく、患者さんの家族や親族、友人たちと会話ができるようなレストランが病院の近くや病院の中にあるととてもいいと思う。家族や親族、友人たちと一緒に食事をすることで一人で食事をするより、味も心の持ち方も変わってくると思う。家族や親族、友人たちとは同じ食事を食べることは患者さんの状況により難しいかもしれないが、看護師や管理栄養士がその場にいてサポートする体制があれば、実現できるのではないだろうか。一緒に食事をして一緒に会話などを楽しむことができれば、それは、患者さんにとっての最高に楽しいひとときになるのではないかと思う。患者さんの憩いの場を作ることはとっても重要だし、治療を頑張る糧にもなりえるはずだ。さらに、私は、病院の中に地域と連携したコミュニティーをつくることにより、病院が街として存在することができると考える。例えば、高校生レストランや地産地消を生かした道の駅、新しい起業を支援するためのアンテナショップなど、病気に関係なく一般の人がそれらを求めて集まることで町の日常が生まれる。これは、患者さんに病気になる前と同じような日常と元気になったときの日常という未来の希望を与えることができると思う。

 患者さんの思いに寄り添い、最高に楽しいひとときを私の思う病院食で実現し、治療を後押ししたい。病院食をとおして患者さんをサポートしていきたい。これが私の目指す病院の管理栄養士だ。この夢を叶えるため、どんなに辛いことがあってもそれに屈することなく、前だけを見て初心に戻って頑張っていきたい。


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