福岡県立折尾高等学校 3年

末 藤    良
 

人生を変えたもの
 
 偏差値38。中学時代、私は本当に勉強が大の嫌いで、授業中にも居眠りをしたり、絵を描いたりと全く授業を聞いておらず、先生方からも見放されていた。そして、そんな私も受験期に入り模試を受けに行った。数日が経ち、結果が返ってきた時、私は絶句した。私の偏差値が38しかなかったのだ。行きたいと思っていた折尾高校も、滑り止めで受けようと思っていた私立の高校もどちらも最低のE判定であった。私は何もする気がおきなかった。しかし、このままでは私の人生が終わってしまうと思い、受験に向けて今までの分を取り返す勢いで勉強に取り組んだ。流行り病等で苦労することもあったが、頑張った甲斐もあって、なんとかギリギリのところで合格を勝ち取ることが出来た。

 そして高校に入学して、私は人生が変わる運命的な出会いをした。それが簿記だ。折尾高校では毎日必ず簿記の授業がある。その授業を受けていくうちに、私は初めて授業が楽しい、もっと学んでいきたいと思うようになり、簿記の授業を楽しみながら全力で受けるようになっていった。すると、不思議なことに簿記を楽しむようになってから、簿記以外の教科もおもしろいと感じるようになった。そう思う頃には、成績も全体的にかなり上がり、中学校の時とは比べものにならないほど良くなっていた。そして私は2年に上がり、簿記の中でも難関資格である、日本商工会議所簿記検定の二級を取得することができた。

 この頃には、私の中に強い信念があった。それは、私の人生を変えてくれた簿記を使う仕事がしたいというものだった。私はすぐにでも手に職をつけたいと考えていたため、色々と調べていた。調べていく中でとりわけ私の興味を引くものがあった。それは、国家公務員である税務職員という仕事だ。主な仕事内容は、租税の割り当てや徴収などに関する行政の事務である。これを見て私は、自分の好きな簿記を使って税に関する仕事ができ、なおかつ高校生の間に受験ができるということに魅了された。いつしか私はこの仕事に就かなければいけないんだという使命感にも似た何かを宿すようになっていた。

 税務職員になるには、9月の第一日曜日に行われる、第一次試験に合格し、次に行われる第二次試験に合格する必要がある。さらに税務大学校各研修所に入校し、約12か月の研修を受けたのち、はれて税務職員になることができる。一次試験は、基礎能力試験、適性試験、作文試験があり、二次試験では人物試験、身体検査等が行われる。そして私が受験しようと考えている九州地区の倍率は約10倍と、とても生半可な気持ちでは合格できないものになっている。私は、他に目指している人たちよりもスタートダッシュが遅くなってしまったが、学校の勉強と並行しながら、公務員の勉強を周りに負けたくない、周りに追いつき、追い越すんだという気合で取り組んでいる。その甲斐あってか、勉強を始めた当時は全く理解のできなかった、数的推理や判断推理もだんだんと理解できるようになり、そのことが楽しくてしょうがなくなっている。

 今、私はとても充実している。中学時代、偏差値38で勉強が嫌いだった私が折尾高校に入学し、簿記と出会って人生が変わり、この簿記を使う仕事がしたいという夢まで持てるようになった。好きなことを仕事にしていくのは難しいことだ。だから仕事の中で好きなことを見つけ、それを広げていくことが大切なんだと、思うことができた。これからも、簿記を片手に何事も博愛の精神で取り組んでいきたい。


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