芸術工芸高等専修学校 3年

原  麻 理 奈
 

世界中の野菜や自然とコラボする
 
 私は、学校が休みになると、山梨の祖母の家によく出かけます。祖父が亡くなり、祖母は、田舎の家に一人で住んでいます。

 朝、祖母の家で私が目を覚ますと、祖母は「さ、畑に野菜を取りに行くぞ。一緒に行くかい」と私を誘います。本当は、まだ寝ていたいのですが、元気な祖母を追いかけ、後ろをのろのろとついていきます。

 畑に着くと、祖母は、私に必ず同じことを言います。

 「よく見てごらん。同じ野菜でも、色や形がみんなそれぞれ違うだろう。でも、本当はこれが一番大切なことさ」。そして、祖母は畑を見て回りながら、何かぼそぼそ、野菜と話をしているのか、意味の分からないことをしゃべり続け、最後に、野菜を選んで収穫します。

 ある時、私は祖母に、「いつも畑を回りながら、何を話しているの」と聞いたことがあります。すると、祖母の返事は「なーに天気のこと、水のこと、食べごろのことを聞いているのさ。野菜はみんなおしゃべりでな、こっちから話をすると、色々なことを話してくれるのさ」という返事でした。

 台所に戻って、野菜を洗いながら、「野菜だって頑張っているのさ。トマトもキュウリもナスも、一つひとつ形が違うだろう。味だってよく味わえば、甘いものもあれば、少し苦いものもあって、野菜は自分で考え、自分らしく大きくなるのさ。人も同じさ」と、祖母は続けました。

 中学生の時、ガーデニング部員として、野菜を育てていましたが、夏の日差しをいっぱい浴び、日に日に大きくなる野菜を観察した時、何か心が落ち着き、暑さを忘れて活動したことを思い出しました。

 校庭の畑で育つ野菜と話をしたことはありませんが、くるりと可愛く曲がった形に育つキュウリに、なんでその形にしたのかと聞くことができたら、どんなに楽しいだろうと思ってしまいました。

 もし、私が野菜の話を聞くことができるようになったら、他の花や木の話も聞くこともできるかなと考えてしまいます。

 人が、自然や植物に、優しさを求めるのは、昔から変わっていないのではないでしょうか。

 これからどんなに技術が進歩しても、植物を育て、観賞し、感動する気持ちは、世界の人に共通して残っていくと思います。

 世界中で植物は育っているのだから、この植物の自然な色や形、香りとコラボする作品を作ることができたら、きっと素晴らしいアート作品になると考えます。

 植物の声をもっと聞いて、アイデアを出し合い、コラボ作品として完成する。想像しただけでもワクワクしてしまいます。もしかしたら、ネットで世界中をつなぎ、国をまたぐ合作もできるはずと考えます。

 作品の原料は、百パーセント自然。作品は部屋に飾るアート。植物の色素で染色した服や靴、植物の声を聴くことで機能的な帽子もできると思います。日々使うハンカチも優しい肌触りのものができるかもしれません。食べ物を盛り付ける器も、四角や丸以外の形が増える可能性だってあります。

 遠くの山や海、森に行かなくても、自分の身の回りが自然になります。

 いま、美術の高等専修学校に通っている私ですが、いつの日か、植物の持っている「優しい力」とのコラボ作品を作る仕事に就いて、その作品を世界中に送り出すというのが、私の夢です。


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