茨城県立牛久高等学校 3年

倉 持  康 生
 

教師のバトン
 
 私の将来の夢は、小学校の先生になることだ。この職業に就きたいと思ったのは、自分を大きく変えてくれた小学校の先生との出会いがきっかけだ。

 桜が満開に咲く中での入学式。幼稚園を卒園して、憧れていた小学生。みんなワクワクドキドキしながら新たな学校生活に胸を躍らせたことだろう。しかし、私は違った。今まで全く話したことのない人たちがたくさんいるその新しい環境に不安と恐怖しかなかった。学校生活とはどんなものだろうか、友達は本当にできるのだろうか。先の見えない不安で胸が押しつぶされそうになった。そこから少しずつ学校に行くことが嫌になった。学校に遅れて行ったり、休んだりすることも増えた。

 しかし、ある人が私を大きく変えてくれた。それは、担任の先生だ。その先生は、女性で、とても優しかった。学校に行くと、いつも元気な声で「おはよう」と挨拶をしてくれた。休み時間が終わり、外から帰ってくると、「今日は誰と何をして遊んだの」と質問をしてくれた。周りに話しかけられない私を見て、コミュニケーションを取れるようにサポートをしてくれた。些細なことかもしれないが、私はその先生の行動で元気づけられ、安心することが出来た。「学校って楽しい場所なんだ。」少しずつそう思うことができた。だが、それでもまだ学校を休むこともあった。そんな時でも先生は優しかった。電話を掛けてくれたり、家に来て話を聞いてくれた。その時にかけてくれた言葉が私の心を大きく動かした。それは、「みんな待っているからおいで。」この言葉を聞いた時、小学生ながら、自分を必要としてくれている人がいる。自分を認めてくれている承認感のようなものを得られた。そして、学校は私の新たな居場所なんだと気がつくことができた。それから毎日学校に行くのが楽しくなった。ワクワク、ドキドキ、胸を弾ませながら登校していたのを今でも鮮明に覚えている。

 人間は生まれ持った正確があり、その性格を変えることは難しいのかもしれない。しかし、人格は変えることができると思う。出会う人や言葉、環境によって形成されいくものであり、私は、学校を通して経験することができた。私を大きく変えてくれた担任の先生のように、今度は私が多くの子どもたちに大きな影響を与えられる先生になりたい。そのためには、常に他者の立場になって考えることが大切だと思う。今、何を考えていて、どういった気持ちになっているのか、どんな言葉をかける必要があるのか。生徒が30人いれば、30通り解答があると思う。だからこそ、生徒一人ひとりと真剣に向き合い、本気で関わり、私なりの答えを見出したい。

 現在日本では、教員数が年々減少してきていて、教師不足が深刻化してきている。私は、自分自身が先生になることも夢だが、教員の人数を増やすというのも最終目標として掲げている。教員が増えれば、教育の質も高まると思うし、何よりも子どもたちには、多くの大人と関わってほしい。同じ人間はこの世には存在しない。人それぞれに個性がある。だからこそ、学校といのは勉強を学ぶ場だけでなく、多くの人と関わり、変化していく環境の中で、人間的成長を育む場でもあってほしい。その第一歩としてまずは、私自身が教師となり、理想とする教師像に向かって子どもたちと日々成長をしていく。そして、最終的には、私の姿を見て、「こんな先生になりたい。」と思い、教師を目指す人が増え、今度はその子たちが大人になった時に、別の子どもたちに大きな影響を与えてほしいと思う。

 未来のことは誰にも分からない。だからこそ、今できることを一生懸命にやりきり、少しでも私の理想の未来に近づけるように日々精進していく。


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